なぜ15秒がいいのか
時間制限のないものから短いものまで数ある動画投稿SNSの中にあってTikTokの投稿時間は15秒。この時間にヒットの理由があると、若者文化に詳しいマーケティングアナリストの原田曜平さんは話す。
「例えば、6秒動画のSNSであるVineと比べて適度な長さがある分、様々な曲を使えて動きにもオチがつけやすい。表情をコロコロと変える動画や、曲のサビの始まりで本気で踊るのかと思いきや静止するだけ、といったネタ動画など、オチや盛り上がるところが面白いですよね」
なぜ投稿者が増えるのか
長すぎず、簡潔。お題は同じものが多いが、オチは様々。そんな瞬間芸が共鳴されているのだ。
TikTokの投稿で多いのは「リップシンク(口パク)動画」だ。TikTok内で提供されている楽曲なら手軽に使用ができる。
「口パク動画は撮影が簡単です。メイン画面の下にあるボタンを押せば録画モードになり、楽曲も簡単に選べるようになっていて編集や撮影の知識がなくてもかわいい動画を撮れます。私自身が楽しく撮れば、誰かに見てもらえる。それがTikTokです」(前出・ひなたちゃん)
多くの動画は、自宅や教室など日常的な風景の中で撮影されており、実にシンプルだ。
「一時期流行したSNOWというアプリのように、犬の鼻をつけたり、脚が長くなる機能もありますが、TikTokでそういう効果を使うユーザーは少ないです。極端に盛るのではなく、“自然に盛る”。そこも投稿者が増えている理由だと思います」(前出・原田さん)
よく使われているのは、肌を少し白くする、顔や体型をシャープに見せるなどのエフェクトだ。
なぜ長時間、何度も、見続けてしまうのか
前出のフラーの調査では、TikTokの日本のユーザーの平均起動回数は、1日に42回とTwitterの15回に比べて3倍近い。
「AIが、ユーザーが視聴したコンテンツを認識し、その人の好みに合ったコンテンツを次々と流すので、結果として視聴時間が長くなるのです」(前出・広報担当者)
タイムラインの仕組みにもその理由があると堀越さんは分析する。
「ほかのSNSでは、友達など〝フォローした人〟の投稿がタイムラインに流れてきます。しかし、TikTokでよく見られるのは〝おすすめ〟のタイムライン。次々に知らない人のおもしろい動画を見ることができます。わざわざ自分好みの動画を検索しなくてもいいので、ずっと見続けてしまう。これも拡散性の高さに繋がっています」
好きな動画が次々と推薦されるため、世界観を共有するユーザーにリーチしやすい。
前出のTikToker・ひなたちゃんも「私が投稿した動画は有名人が取り上げたわけではなく、自然にバズりました」と語る。
若者が最初に見つけた大人が入りずらいアプリだからこそ、秘密の楽しさがあるのかも知れない。
今年からきゃりーぱみゅぱみゅ、ピコ太郎、HIKAKINなど、10代に人気のアーティストもアカウントを開設。素人が次々とスターになるTikTokの勢いある波に大人は乗ることができるだろうか。