中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)の「新ビッグ3」の急成長が際立っている森保ジャパン。中島、南野に伊東純也(柏)を含めた「歴代最強イケメントリオ」が新生ジャパンを盛り上げているのは、ライトなファンにも興味深いところだろう。
しかし、日本サッカー界の若手台頭は彼らにとどまらない。現在、インドネシアで開催中のAFC・Uー19(19歳以下)選手権で、来年のU-20(20歳以下)ワールドカップ(ポーランド)出場権獲得を目指しているU-19日本代表にも将来を嘱望されるタレントが目白押しだ。彼らは28日の準々決勝で地元・インドネシアと世界切符を賭けた大一番に挑むことになる。5万人の大観衆が集まるアウェーの中、いかにして勝利を収めるか。若きジャパンの底力が問われることになる。
このチームで抜群の知名度を誇るのが、バルセロナで小学生時代を過ごした天才少年・久保建英(横浜)。だが、才能ある選手は彼だけではない。「U-19イケメントリオ」とも称すべき3人をここで紹介してみたい。
常勝軍団鹿島で活躍中のU19日本代表10番、安部裕葵
まず1人目は、エースナンバー10をつける安部裕葵(あべひろき=鹿島)。常勝軍団でプロキャリアをスタートさせた2017年からJ1・13試合出場という実績を残した実力派だ。東京出身で、中学時代は本田圭佑(メルボルン)がクラブ経営に携わっているS.T.フットボールクラブ(東京・清瀬市)で過ごし、全国的にそこまで知名度の高くない広島県瀬戸内高校に進学。鹿島のスカウトに見初められたという異色の経歴を持つ。
「僕が中2から中3に上がる時に、本田さんがプロデュースするソルティーロ(・ファミリア・サッカースクール)が清瀬のクラブを買い取って、クラブ名が『S.T.フットボールクラブ』に変わった。本田さんも練習に来てくれました。彼は日本で物凄く成功している選手の1人。そういう人が身近にいたことは自分の強みになるし、励みにもなる」と本田の強靭なメンタリティを受け継ぐ19歳は今年6月のロシアワールドカップのキャンプ地・カザンに遠征した際、目を輝かせていた。
恩師とも言える本田、あるいは鹿島の偉大な先輩である小笠原満男・内田篤人の薫陶を受けた男は、今どきの10代とは思えないほど強い信念を持った若者だ。が、ルックスはジャニーズ系のイケメン。プレーも背番号10らしい高度な技術と創造性、相手の裏をかくアイディアを前面に押し出せるのだから、見る側を大いにワクワクさせる。
インドネシア戦ではもちろん勝利を引き寄せるゴールが求められるが、本人は「ゴールがチームのためになるのは分かっているけど、そういうのは運やタイミングが必要になる。それ以上に必ずできるのは、走ることだったり、声を出して戦うこと。それは100%やれる自信はある」と闘争心を前面に押して戦い抜くつもりだ。本田圭佑ばりのタフさをこの大一番で遺憾なく発揮してほしい。
チーム最年少の点取屋・斉藤光毅
2人目のイケメンは、チーム最年少の点取屋・斉藤光毅(さいとうこうき=横浜FCユース)だ。身長170㎝と小柄だが、爆発的な速さと相手の裏に飛び込む鋭さ、驚異の決定力を誇るスピードスターはまだ17歳。久保建英より誕生日が2か月遅いため、本当に一番年下の選手である。体の小ささを感じさせないゴール前での推進力と迫力はリオネル・メッシ(バルセロナ)を彷彿させるものがある。今大会3試合連続ゴールと大ブレイクしているのも、こうした非凡なセンスの賜物だろう。
「年齢は自分の中で関係ないと思っているので、もっと貪欲にやっていきたい」とカワイイ顔とは対照的な強気の姿勢を前に出すところが実に頼もしい。彼が「歳は関係ない」というのも、横浜FCのトップチームにキング・カズ(三浦知良)という最高のお手本がいるからかもしれない。51歳になってもまだプロサッカー選手を続けている大先輩の一挙手一投足を身近なところから見ているだけに「若い自分がやらないわけにはいかない」という気持ちになるのも、よく理解できる。
「淡々としているように見えて心の中は熱いタイプ? もちろんそうです。大舞台に立ったら緊張するだろうけど、その緊張感を『走るぞ』『やるぞ』っていう気持ちに変えられると自分は思っている。5万人の大観衆の中で戦えることをポジチィブに捉えられたらいいと思ってます」と弾けんばかりの笑顔を見せた斉藤光毅は先発2トップの一角を占める見通し。エースナンバー10・安部のお膳立てから最年少アタッカーのゴールで日本が世界への扉をこじ開けるという展開になれば、まさに理想的なシナリオと言っていい。
内田篤人を越えるポテンシャルと評価される菅原由勢
ラストイケメンは、右サイドバックかセンターバックのいずれかに入るであろう18歳の菅原由勢(すがわらゆきなり=名古屋)。今季J1開幕戦だったガンバ大阪戦でいきなりスタメンフル出場を果たすなど、風間八宏監督も才能を認めた守備の逸材だ。現在、高校3年生で、学業とサッカーの二足の草鞋を履きつつ、5月の時点で早々とA契約(プロ本契約)を締結。高給を手にすることになった。けれども本人は「サッカー選手は人生短いですし、その間に一生生きていける分を稼がないといけないと思っているんで、シビアに考えてます」と地に足を着けてサッカーに取り組んでいる。今年途中から名古屋で試合に出られなくなり、悔しい思いもしたが、その分、同じ世代で挑んでいる今大会で活躍したい気持ちが強いはずだ。
その菅原の本職は右サイドバック。17歳時点では「同じ頃の内田篤人よりもポテンシャルがある」と言われていた。攻守両面のバランス感覚、機を見ながらタテに上がれる速さ、クロスの精度とプレーの面で3拍子揃っているうえ、笑顔が爽やかで、性格的に明るく、トークセンスも抜群とキャラクター的にも傑出したところがある。「内田の再来」という評価を受けるのも頷けるところだ。
「内田選手は右サイドバックの目標だし、映像はメッチャ見ています。そういう代表の先輩と比較してもらえるのは嬉しいです。でも僕は僕だし、内田選手は内田選手。やっぱり追い越さなきゃいけないなとは思ってる。誰かと比べられる世界ではあるけど、自分っていう選手を大切にしたいし、自分を忘れずにやりたいなと思ってます」と菅原はあくまでオリジナルの自分にこだわっていくつもりだ。その自信とプライドをインドネシア戦で思う存分、出し切り、ヤングジャパンの守備をリードすること。それが内田を超えるための第一歩になるだろう。
2020年東京五輪代表・A代表入りという近未来の成功をイメージしつつ、「U-19イケメントリオ」の動向に注目していきたい。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。