パフォーマンスの高さはiPhone XS、XS Max並み、コスパは一番
カメラ以外も、機能は豊富で、詳細に見ていくと決して“廉価版”と呼ばれる機種ではないことが分かる。昨年から対応が始まったワイヤレス充電は引き続きサポートしているほか、フロントにはTrueDepthカメラが搭載されており、Face IDでのロック解除も行える。機械学習の処理能力を強化したA12 Bionicのお陰で、ロック解除もスムーズだ。
TrueDepthカメラを搭載しており、Face IDも利用できる
FeliCaにも対応しており、Apple Payも利用できる。細かだが重要なバージョンアップとしては、iPhone XS、XS Maxと同様、FeliCaチップ側に予備電源が内蔵されており、本体のバッテリーが切れたあともSuicaでの決済が行える。いざというときにも電車やバスに乗れたり、買い物をできたりするのは安心感がある。
A12 Bionicのパフォーマンスの高さも、折り紙つきだ。iPhone XS、XS Maxをレビューした際に触れたので詳細は割愛でするが、ベンチマークテストでも良好な結果を示していただけでなく、さまざまなアプリの動作もスムーズ。特に、機械学習やAR機能を活用したアプリを使ったときの違いは顕著で、iPhone Xよりも熱を持ちにくいなどのメリットがある。それだけ、処理能力に余裕があるというわけだ。
リアルタイムに映像を合成する「Clips」のようなアプリも、快適に動く
iPhone XS、XS Maxは64GB、256GB、512GBの3モデル構成だったが、iPhone XRは、64GB、128GB、256GBの3モデル構成になっている点も、うれしいポイントといえる。512GBはiPhone XS、XS Maxから登場した大容量モデルだが、正直なところ、よほど動画を貯めこまない限り、ここまでの容量は必要ないだろう。クラウドに写真などを保存している人にとっては、256GBでも過剰といえるかもしれない。
試用したのは256GB版だが、128GB版も用意されている
一方で、iPhone XS、XS Maxには多くのユーザーが最適だと思う可能性が高い128GB版がラインナップされていなかった。128GBがちょうどいいと思っても、より高価な256GB版を選ばざるをえなかったのだ。この点でも、iPhone XRは良心的なラインナップがそろっているといえる。
8万4800円からという価格も評価できる。iPhone XS、XS Maxがともに10万円を超えている中、スペックの近いiPhone XRが税抜きとはいえ、8万円台なのは非常に魅力的だ。こうしたポイントを踏まえると、iPhone XRは無駄をそぎ落とした本命モデルといえる。高級路線に向かったiPhone XS、XS Max以上に、幅広いユーザーにオススメできる1台に仕上がっている。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★
撮影性能 ★★★★★
音楽性能 ★★★★
UI ★★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
バッテリーもち ★★★★★
持ちやすさ ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。