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ボストンで話題のロボットレストランから考える未来の飲食店の姿

2018.10.25

既に日本にロボットレストランは存在する?!

食材の準備と盛り付けは人間が行い、調理のみロボットが行うという、このシステム。実は日本では既に「リンガーハット」などで導入されている。

リンガーハットの看板メニュー「長崎ちゃんぽん」を作るために導入された「自動野菜炒め機」。

キャベツやモヤシなどの野菜を炒めるドラム型の機械で、調理時間は約1分。ムラなく野菜に火を通せる上に、調理人の腕に関わらず誰でも一定の味を出すことができる。

野菜が入った鍋は「自動鍋送り機」に乗せられ、冷凍麺が入れられる。店員が行うことは、鍋に入った冷凍麺を返したり、スープをかき混ぜるくらいだ。

既に日本で導入されていたこのシステムが、ボストンで大変話題になっている(私が店に行った時は店内満席&ハーバード大学MBA生のグループが見学にきていた)のは、オートメーション設備をエンタメ要素として提供した発想の転換にあると思う。

自動調理機の並んだ店内を「無機質な空間」ではなく、「エンタメ空間」に変えたspyce

寿司屋をはじめ、日本では職人が手作業で時間をかけて料理を作る姿を見せることが「美」とされてきた。

そのような意識が浸透されている日本では、機械が短時間で自動調理する料理に対して良いイメージはなく、飲食店側もお客の目の前に自動調理機を置くという行為は慎んできた。

しかし、spyceでは敢えて自動調理機を表に出し、また呼び名も「自動調理機導入レストラン」ではなく、「ロボットレストラン」と表現することで、話題性を集めた。

そしてspyceの巧みな点は機械に「おもてなし」の要素も組み込んだ点にある。

例えば商品注文の際、前回購入時のデータを保存しておけば、レコメンド商品が提示される仕組みになっている。

食事の嗜好データや体重等のヘルスデータをも保存可能になれば、よりお客様に寄り添ったメニューを提案することも可能だ。

まるで行き付けの店の主人が自分の好みに合った料理を提案してくれるように。

また、自動調理の最中は、鍋の上にある丸いパネルに「sahoのチキンボウルを料理中」というような表示が出る。

まるで「一生懸命あなたの料理を作っていますよ!」と言っているかのように、頑張ってクルクル回る鍋の姿は見ていて飽きない。

このようにして、spyceは注文を受け付けるタブレットや自動調理機がズラリと並べられた店内を、「手抜き料理を出す無機質な店」ではなく、「おもてなしの心があるエンタメ空間」に変えたのである。

今後飲食店の提供価値は二極化へ

今後テクノロジーが進化していくにつれ、spyceやリンガーハットのような自動調理機が導入された店舗や、サンフランシスコにあるような完全無人レストランが増えていくに違いない。クオリティの高い料理を提供できる機械が発明されれば、高い人件費が求められる腕の良い料理人は必要なくなるかもしれない。こうなると、機械を調達できる初期資金さえあれば、料理人が存在しない企業でも外食産業に参入することが容易になるかもしれない。

この意味で、飲食店は今後二極化が進むことが予測される。

徹底的にオートメーション化した低価格路線の店と、職人技やホスピタリティを追求したある高価格路線の店。

雰囲気はオシャレだが、味やサービスは普通とったいわゆる「インスタ映え」するような中価格路線の飲食店は、今後淘汰されていくのかもしれない。

文/小松佐保(Foody Style代表)

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