A:狙いは速さだけではありません
集合管。あるいは、集合マフラー。昔ながらのバイク乗りにとっては、ノスタルジックさに胸が熱くなる言葉ですね。残念ながら大昔は爆音をまき散らす暴走族の象徴のような存在でしたが、現在では健全なスポーツライディングを楽しむためのもの、と、大きくイメージは変わっています。
ところで、「集合」とは何を集めているのでしょうか? エンジンからは気筒数分の排気管(エキゾーストパイプ)が出ており、文字通り排気ガスを通しています。このエキゾーストパイプを集合させたものが、集合管です。最終的にはマフラー(消音器)と接続されています。
1969年に発売されたホンダ・ドリームCB750FOURは、市販車として世界で初めて並列4気筒エンジンを搭載したバイクです。CB750FOURには、1気筒ごとにマフラーを有する4本出しマフラーが採用されていました。
ヨシムラのレーシングスピリットが集合管を生んだ
これに手を入れたのが、バイクのチューニング界の伝説的存在であるポップ吉村こと吉村秀雄氏でした。ヨシムラの創業者である彼は、CB750FOURをベースにしたレーシングマシンの軽量化を図って4本出しマフラーを1本にまとめたところ、狙い通りの軽量化に加えて、なんとエンジンがパワーアップしたのです。
ヨシムラのCB1100/1100EX用 手曲ストレートサイクロン RSC-VINTAGE
当時は、なぜエンジンがパワーアップしたのか、詳しい理屈は分かりませんでした。しかし、軽くなってパワーアップするなら採用しない手はありません。以降、レースの世界では集合管が当たり前になり、それが市販車にも生かされるようになっていきました。
後々分かったことですが、集合管は、各エキゾーストパイプが適切にまとめられることで、排気圧力により排気効率が高まっていました。それがパワーアップや、トルク特性の向上といったメリットをもたらしていたのです。
1974年発売のホンダ DREAM CB400 FOURはエキゾーストパイプが1本にまとめられていた。
ただし、ちょっとした作りの差でエンジン性能が上下する難しさも。吉村氏も、多数の試作品を作りながら試行錯誤を重ねた結果、高性能に行き着いたのです。現在では純正マフラーも当たり前のように集合管が採用されていますが、やはり相当に考え抜いたうえで作り込まれています。
逆に言えば、「集合だから、まとまってりゃいいんだろう」といったいい加減な作りだと、パワーダウンや扱いにくいトルク特性になってしまうことも。集合管は、エンジンパワーはもちろん、扱いやすさにも関わる重要なパーツですので、純正から交換する際はくれぐれも慎重に。
文/高橋 剛