A:ありました。今もあります
信じられないかもしれませんが、エンジンの内部では爆発が起こっています。爆発ですよ、爆発! 機密性が保たれた金属製の小部屋の中の出来事とはいえ、爆発は爆発。当然、熱くなります。熱を放置しておくと具合が悪くなるのはエンジンも人間も一緒。熱を下げなければいけません。そしてエンジンの冷却方法には、空冷、水冷、そして油冷などがあるのです。
空冷は、空気でエンジンを冷やします。熱くなる部分にフィンを設けて風を当たりやすくするなど工夫は施されていますが、基本的にはシンプルそのもの。メカニズムが追加されることも原則的にはありませんので、軽量です。シンプル好きなホンダの創業者・本田宗一郎は徹底的に空冷にこだわりました。時代の要請で水冷化が推進され、もはや空冷ではないと悟った時に、技術者として引退することを決意したのです。まったくの余談ですが。
左)故 本田宗一郎氏
水冷は、冷却水でエンジンを冷やします。エンジンの熱くなる部分をウォータージャケットでくるみ、中に冷却水を通すのです。エンジンの熱を吸収して水も熱くなりますので、これを冷やすためのラジエターが必要です。さらに冷却水を循環させるためのポンプやパイプなども必要となるので、仕組みは複雑で、かつ重量もかさみます。ですが、それ以上のメリットとして、安定した高性能や静粛性を得ることができます。
85年に登場したGSX-R750などスズキが積極的だった
さて、油冷です。油冷は、バイクにおいてはかつてスズキが積極的に採用していた冷却方式。エンジンオイルをエンジン内部にジャバジャバと噴射することで冷却を図るものです。水冷のように冷却専用の水を新たに循環させるのではなく、もともとあるエンジンオイルを使用するので、水冷エンジンよりは仕組みがシンプルで、軽量になるというメリットがあります。しかし、絶対的な冷却性能は水冷にどうしても敵わなかったこと、排ガス規制への対応が困難だったこと、また、オイル消費量が多いというデメリットもあって、表立った「油冷方式」としては事実上姿を消しました。
しかし、ホンダが空冷のCB1100に油冷システムを採り入れていたり、BMWのR nineTなど一部モデルがやはり空油冷を採用しているなど、まったく消え去ったわけではありません(方式はさまざまです)。もともとの冷却方式にプラスαの冷却性を持たせる仕組みとして、油冷は今も(密かに)活躍しています。

BMW R nineT
ちなみにオイルクーラーを搭載したバイクもありますし、カスタムパーツとして出回っていますが、あれはエンジンオイルそのものを冷やすためのもの。油冷は、エンジンオイルでエンジンを冷やす仕組みですので、まったくの別モノです。
文/高橋 剛
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