A:エンジンを「殺る」スイッチです
穏やかではないネーミングですよね、キルスイッチ。右ハンドルで存在感を放つ赤いスイッチです。キルっていったい何を殺すつもりなんだ! 赤は血の赤か! という話ですが、答えは簡単、エンジンを殺します。殺すというと聞こえは悪いのですが、要はエンジンを切るわけです。エンジンを切るからキルスイッチ。覚えやすいですね。
通常、メインキーをオフにすればエンジンを切ることができます。「それならキルスイッチなんか要らないじゃん!」「なんであんな赤々と目立ってるのさ!」と言いたくなる気持ち、よく分かります。目立っているのは、主に緊急時に使うスイッチだからです。
転倒などのトラブルのための装備
バイクは転倒する可能性がある乗り物です。また、必ずしもクリーンに転べるとも限りません。転倒の状況によってはいろんなことになり、メインキーを回せる状態かどうか分からないのです。また、スロットルレバーが路面などにひっかかり、アクセル開けっ放しで後輪が回転し続ける、なんて事態も(割としばしば)起こりがちです。こういった時、ボタンひと押しで確実エンジンをキルしてくれるキルスイッチが、非常に有用なのです。
ここまではオフィシャルな話。実際のところ、キルスイッチにはさまざまな活用方法があります。割と多いのは、信号待ちなどでアイドリングストップをする際にキルスイッチでエンジンを切るという使い方。右手をハンドルから離してメインキーを回すよりは、ハンドルを握ったままボタンを押すだけでエンジンを止められるキルスイッチは便利です。ただし、キルスイッチをオフ(エンジンを切る側)にした後、すぐにオンに戻しておかないと、発進時にセルボタンを押してもエンジンがかからず、オタオタするハメになります。また、長時間停車している場合は、バッテリー上がりにも要注意です(メインキーはオンになっているため)。
信号待ちで言えば、非常に仲の良い親友とツーリング中に並んで停まったとします。あなたが友人のすぐ右側に停まっていたら、友人のバイクのキルスイッチが赤く目立っていることに気付くでしょう。そして、すぐに手が届くことにも。そこで、発進間際に素早く友人のキルスイッチをオフにして、自分は悠々と発進。あわててエンジンをかける友人の姿をミラー越しに眺めて笑う……というイタズラ話を聞いたことがあります。また、休憩時などにこっそりキルスイッチをオフにしておき、「エンジンがかからない〜」とあわてる友人を見て笑う……なんてイタズラ話も。そんなヒドイことをする人が、本当にいるんでしょうか……ねえ?
文/高橋 剛