その違いは、先進の走りと熟成の乗り味
先代にはあったターボとMTモデルが、新型では廃止されてしまい、私を含めた走り好きの中には嘆いている方もいる今回のフォレスターだが、全車とも駆動方式はAWDのみで、ミッションはリニアトロニックCVTを採用。
そのパフォーマンスは、「アドバンス」が145ps/188Nmのエンジンに、組み合わされるモーターは13.6ps/65Nm。一方、「X-BREAK」は、184ps/239Nmとなる。ちなみに装着されるタイヤは、「アドバンス」が18インチのサマータイヤに対し、「X-BREAK」では、17インチのオールシーズンタイヤ。
まずはe-BOXERの「アドバンス」から試乗したのだが、タイヤひと転がり目の発進加速のよさに感激させられた。さらに低速域での再加速にも、アクセル操作に瞬時にモーターがアシストしてくれるので力強さを感じる。
しかも、そのモーターアシストの介入がとても自然で、ギクシャクしたところを感じさせず、車重が1640kgもある車体を、実にスムーズに加速させるのだ。これを体験してしまうと、2.5リットル直噴ガソリンの「X-BREAK」でも霞んできてしまう。
とはいえ、「X-BREAK」でも、充分な加速力を持つのだが、こと発進加速のレスポンスという意味では、「アドバンス」が一枚上手。ただし、走り出してからの中高速では、やはり「X-BREAK」のほうがエンジンに余裕がある分、トルクフルで気持ちいい。
乗り心地に関しては、「アドバンス」がどっしりとして、しなやかなのに対し、「X-BREAK」が少し硬めで剛性感がある印象なのだが、あくまでも乗り比べた場合のこと。
それよりも私が大きく違うなと感じたのが、ハンドリングと運動性能。実は、この2台を街中で普通に流している程度では、気づかないかも知れないが、意外なほど動きに違いがある。
というのも、2台ともカーブなどでノーズの入りがよく、レーンチェンジなどでもキビキビと動いてくれるのだが、「アドバンス」の方はリアの収まりに違和感を覚えるのだ。試しに、パイロンスラロームのように軽く車体を左右に振ってみると、リアがワンテンポ遅れて、さらに揺り返しのような動きをする。
それもそのはずで、「アドバンス」は車重が110kgも重く、その重量物であるリチウムイオン電池をリアに搭載しているのだから、「X-BREAK」とは重量配分までも異なり、運動性能に違いがあるのは当然。
そのことを試乗後に開発者の方に尋ねてみたのだが、「アドバンス」専用にサスペンションを相当煮詰めてセッティングを行ったのだとか。逆に言えば、これだけの重量差がある中で、よくぞここまで仕上げたと褒めるべきなのだろう。
さて、自分が購入するならどちらか、結論を出そう。確かに、「アドバンス」のモーターアシストによる加速感には非常に魅力を感じる。ただ、ハンドリングや運動性能においては、重量の軽いほうが断然有利。さらに、走りの質感や熟成度といった点でも、「X-BREAK」に軍配を上げたい。
ということで、私のように走りを重視するのであれば、「X-BREAK」もしくは同じ2.5リットル直噴ガソリンの「ツーリング」、「プレミアム」から好みで選べば間違いなし!ということになるだろう。
注:今回は、一般道と高速道路での試乗のため、悪路走行性能については考慮していません。
愛を込めて“ダメ出し”
何を隠そう私は、つい最近までインプレッサ WRX STiを12年間乗り続けてきた男。だから多少なりともスバルのことは分かっているつもりで言うが、「e-BOXER」のシステムって中途半端すぎないだろうか?
聞くところによると、新型フォレスター購入者のうち、40%が「e-BOXER」を搭載した「アドバンス」を選択して販売は好調のようだが、これはスバルの先進性への期待の表れでもあるに違いない。
だからこそスバルには、「アイサイト」の時のような、ほかにはできないスバルらしいハイブリッド(もしくは次世代車)を切望したい。もちろん、走る楽しさも忘れずに!
関連情報
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(プロフィール)
文・撮影/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
クルマは走らせてナンボ!をモットーに、どんな仕事にも愛車で駆けまわる日々。クルマのほかにもグルメやファッション情報、また小学館Men’s Beauty(https://beauty-men.jp)では、男性に向けた美容・健康法、化粧品情報なども発信。