MVNOで新しいiPhoneは使えるの?
ところで、これまで主要3社でiPhoneを購入しときは、iPhoneにSIMカードを挿し、初期設定をすれば、すぐに使うことができた。SIMフリー版のiPhoneは、その名の通り、SIMロックがかけられていないため、基本的にはどの携帯電話事業者でも利用できる。たとえば、すでに主要3社で契約しているiPhoneを利用しているときは、SIMフリー版のiPhoneを購入して、新しいiPhoneにSIMカードを挿しかえれば、すぐに利用できる。
では、SIMフリー版iPhoneにMVNO各社のSIMカードを挿して、利用できるのだろうか。実は、ここでひとつ理解しておきたいことがある。現在、主要3社はアップルと契約して、今回発表されたiPhone XS/XS Max/XRを含め、最新のiPhoneを販売している。これに対し、UQモバイルやワイモバイルなどのサブブランドをはじめ、一部のMVNO各社が販売するiPhoneは旧機種に限られており、主要3社とは異なるルートで調達されたiPhoneも販売されている。そのため、サブブランドやMVNO各社のSIMカードをiPhoneに挿してもインターネットに接続できないなど、そのままでは正しく動作しないケースがある。
そこで、サブブランドやMVNO各社では、iPhoneを利用できるようにするための「APN構成プロファイル」という設定ファイルを配布しており、これをiPhoneにダウンロードして、iOSにインストールすることで、主要3社で利用しているときと同じように、iPhoneが利用できるようになる。ちなみに、ダウンロードにはWi-Fi接続など、インターネット接続が必要になる。このAPN構成プロファイルは、一度、インストールしてしまえば、そのまま利用し続けられるが、まれにiOSのバージョンアップなどで仕様が変更され、再インストールが必要になることもある。
SIMフリー版iPhoneは高い? …実は13か月で差額が埋まるケースも。
SIMフリー版iPhoneは、Apple StoreやアップルのWebページから購入できるが、主要3社で購入したときと違い、いくつかの割引サービスが適用されなくなる。そのひとつが月々サポートなどの月額割引だ。
これまで、主要3社でiPhoneを購入すると、24回(一部機種は36回)に渡り、月々の利用料金から一定額(2000〜3000円程度)が割り引かれるサービスが利用できた。そのため、端末を割安に購入できるというメリットがあった。
ところが、アップルからSIMフリー版iPhoneを購入したときはこの割引サービスが受けられない。つまり、iPhoneの端末代金を丸ごと負担しなければならないわけだ。もう少し具体的に説明すると、NTTドコモで購入した場合、iPhone XS 256GBは13万6200円(税抜、以下同)で、24回に渡り、月額2275円の月々サポート割が受けられるため、2年間、利用した後の実質負担金は8万1600円になる。これに対し、アップルで購入するSIMフリー版は12万9800円なので、約5万円ほど、負担が増えることになる。つまり、端末の実質的な価格は割高になってしまうわけだ。
ただし、主要3社の料金プランの内、auの「ピタットプラン」や「フラットプラン」、ソフトバンクの「ウルトラギガモンスター+」や「ミニモンスター」では、料金を従来よりも割安に設定する代わり、月々サポート割と同様の「毎月割」や「月月割」の適用が受けられなくしている。つまり、これらの料金プランで契約する場合、端末購入時の負担額はアップルから購入したときとほとんど変わらないわけだ。違いがあるとすれば、キャンペーンなどによる割引サービスのみになる。
これらのことを総合すると、主要3社とアップルで購入したときの端末代金の差額は、大きく見積もっても5万円程度。購入後、どれだけの期間、同じ端末を継続して利用するかによって、損得勘定が違ってくるが、料金プランを比較すると、NTTドコモで契約した場合、基本プランがシンプルプランで980円、インターネット接続サービスのspモードが300円、パケットパックのベーシックパックがステップ2の3GBでは4000円で、月々の支払いは5280円になる。
これに対し、MVNOのIIJmioの音声通話機能付きのミニマムスタートプランは3GBで月額1600円なので、その差額は3680円。単純に計算すれば、約13カ月で差額が埋まってしまう計算だ。
ちなみに、auとソフトバンクの月額割引を受けられない料金プランを選び、同じようにデータ通信量を3GBで計算すると、auがピタットプラン(シンプル)で月額4980円、ソフトバンクがミニモンスターの5GBまで(3GBまでの設定がない)が月額7480円となっている。端末価格がSIMフリー版iPhoneとほぼ同額であることを考えると、SIMフリー版iPhoneを購入し、MVNO各社の格安SIMを利用した方が割安になる。
ただし、これらの比較はあくまでもひとつの目安であり、実際には主要3社やMVNO各社が割引サービスやキャンペーンなどを実施しているため、差額や損益分岐は違ってくる。特に、主要3社は新しいiPhoneの発売を機に、期間限定のキャンペーンを展開しているうえ、2年後に端末の下取りを条件に、支払い額を実質半額に抑える「アップグレードプログラムEX」(au)や「半額サポート for iPhone」(ソフトバンク)なども提供しているため、SIMフリー版iPhoneとMVNO各社のSIMカードの組み合わせの方が必ず割安とは言えないケースもある。
また、主要3社とMVNO各社では、ショップなどでのサポート体制が大きく違ううえ、お昼休みや夕方以降など、混雑時のネットワークのパフォーマンスにも大きな差がある。格安SIMデビューを狙うのであれば、これらの違いも十分に理解したうえで、検討することをおすすめしたい。
取材・文/法林岳之