ヨーロッパでの温水洗浄便座普及の糸口とは?
日本で受け入れられている温水洗浄便座を、そのままヨーロッパの一般家庭や企業に売り込もうというのは困難だということは分かってもらえたはずです。
そのような安直な参入は、「現地独特のトイレ業界」、「住宅構造の違い」、「住宅に関する考え方の違い」、さらに「水質の違い」や「配管の違い」など様々な問題によって阻まれてしまうからです。
ならば、どのようにすれば、日本人の愛する温水洗浄便座の素晴らしさを認知させ、一般家庭にもすんなり導入してもらえるようになるのでしょうか?
生活者視点からは、いくつかの糸口が見えてきます。
温水洗浄便座普及の糸口1:ヨーロッパ人のおしりだって洗ってほしい
「おしりだって洗ってほしい」のキャッチコピーは、TOTOの温水洗浄便座を一気に話題にしたことで有名ですが、ヨーロッパ人の心にも響くものだと筆者は思います。
その理由のひとつは、ビデの存在。
温水洗浄便座が日本のほとんどの一般家庭で見られるように、ヨーロッパのほとんどの一般家庭ではビデが見られます。
ビデとは、便器の横に並べて設置してある衛生陶器で、用を足した後におしりを洗うためのノズルがついています。
温冷の切り替えも可能で、便器からの分離や手動式であることを除けば、機能は基本的な温水洗浄便座と何ら変わりません。実際に跨がなくても、トイレットペーパーを湿らせる用途にも使えます。
つまり、多くのヨーロッパ人も、多くの日本人と同様に、おしりの清潔を気にかけているということです。
温水洗浄便座普及の糸口2:まずは日系ホテルや旅館から
ホテルオークラやニューオータニ、加賀屋などの日系ホテルや旅館が海外進出を活発に行っています。
海外の一般家庭での導入には、比較的高額な設置費を強いる温水洗浄便座ですが、企業にとってはそれほど大きな出費にはならないはず。まずは海外進出している日系ホテルや旅館内の客室に、確実に導入してもらうことが認知度を高める糸口の1つなのではないでしょうか。
また、日本美術を展示する美術館などに隈なく設置し、実際に使ってもらい続ければ、最終的には「あって当たり前」という印象を作り上げることが可能だと思います。
温水洗浄便座普及の糸口3:現地トイレメーカーとの賢い協力
いくつかのOEM供給の例に見られるように、現地トイレメーカーとの協力は温水洗浄便座普及に不可欠です。
例えば、現地の老舗トイレメーカーと協力し、まずは「暖房便座」だけでもデフォルトで製品に付けてもらうなど、小さく、下から攻めていくのも手ではないでしょうか。
以上、ヨーロッパで”温水洗浄便座”が広まらない3つの理由と普及の糸口でした!
2020年の東京オリンピックでも、多くの外国人が日本の温水洗浄便座に惚れこむことでしょう。
文/諸原龍之介
※記事内のデータ等については取材時のものです。