まだ日中は暑い日もある今日この頃だが、随分、秋の気配が感じられるようになってきた。これからどんどん涼しくなってくると、その気温差で風邪を引く人も増えてくるだろう。そこでこの時期、注意したい秋風邪予防のコツを医師に聞いた。
秋風邪と夏風邪と冬風邪の違い
秋風邪は、夏風邪、冬風邪と比べてどう違うのか。のぞみクリニックの筋野恵介先生は次のように話す。
「秋風邪、夏風邪、冬風邪は、3つとも、ほとんどウイルス感染で、1割から2割は細菌感染です。夏風邪のウイルスは、湿気に強いウイルスが流行します。アデノウイルス・エンテロウイルス・コクサッキーウイルスなどです。冬風邪のウイルスは、乾燥に強いウイルスが流行します。インフルエンザウイルス・ライノウイルスなどです。秋風邪は季節の変わり目なので、この両方のウイルスが混在します。秋のはじめの頃は、夏風邪のウイルスが引きずり、秋の終わりになってくると、冬風邪のウイルスが出てきます。
しかし、あくまでもこれらは流行するウイルスということです。夏でも、インフルエンザの感染報告が散発的にみられるなど、流行しづらいということで、この季節以外かからないというわけではありません」
ウイルス感染による風邪発症の仕組み
秋風邪を予防するために、少し知識を蓄えておこう。風邪、すなわちウイルス感染は、感染経路・ウイルスの量・宿主の免疫力の3つで決まるという。
1.感染経路
「すべてのウイルスは、感染し増殖できる部位が決まっています。例えば、インフルエンザウイルスは、上気道の粘膜で増殖することができます。指にインフルエンザウイルスが付着し皮膚の傷口を触ったからといって、足にある傷口にインフルエンザウイルスが増殖するなどということはありません。マスクやうがいをするなどして、ウイルスの感染経路を遮断することが大切です」
2.ウイルスの量
「当然ながらウイルスがいなければ感染することはありません。くしゃみや、咳をしたときに飛ぶ飛沫の中にウイルスがいるかどうか、その中のウイルスの量も左右されます。冬場の胃腸炎の原因として多いノロウイルスは、口から10~100個のウイルスが侵入すると感染するといわれています。つまり1個しかノロウイルスが入らなければ感染が成立しないということです」
3.宿主の免疫力
「ウイルスの侵入を防げるかどうか、もし侵入されてもウイルスの増殖を抑えられるかどうかということです。秋風邪の場合は、残暑も厳しいので、夏バテや夜の暑さにより睡眠が浅くなるほか、夏休みで子どもたちも学校が休みで家事などの負担が増加し、疲れがたまるなどして、疲労や自律神経のバランスが乱れ、免疫力が低下しがちです。そして、秋は日中の気温は高く、夜は冷え込むことが多くなります。人間は5℃以上の急激な気温の変化があると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経のバランスが崩れると、唾液等の分泌が悪くなり、口腔粘膜等が乾燥しウイルスが侵入しやすくなります。そして、ウイルスが侵入したときに、ウイルスを抑え込む働きをする白血球やリンパ球等の免疫細胞の働きも悪くなります」