一番大切なのはパニック状態に陥らないこと
「なんだ、コノヤロー! 俺をバカにしてのかぁ!」。いきなり暴漢役の男の怒号が響く。
戸惑う乗客たち。
「逃げろ!! 逃げろ!!」「後ろに逃げろ!」
誰かが叫ぶ声で一斉に乗客が後ろの車両へと駆けだす。
もし、本当にこんな場面に遭遇したら、一番大切なのはパニック状態に陥らないことだ、状況を冷静に判断して、安全な場所がどこなのかを見極めなければいけない。また、犯人に対抗しようとしてもいけない。
一人取り残されても、まだ、わけの分からない言葉を発して暴れる男。すると……。
「ピー、車掌です。どうしました?」
「すいません、今、14号車で凶器を振り回している人がいます。助けてください! 私はJR東海の社員です」(JR東海社員)
「わかりました、すぐに14号車に向かいます。お客様を後方に逃してください」(車掌)
「はい、わかりました」(JR東海社員)
東海道新幹線N700Aには、デッキに緊急事態の時に乗務員と通話ができる「緊急通報装置」が設置されている。たまたま出張で乗り合わせていたJR東海の社員が、それを使って車掌に知らせたという想定だ。新幹線乗車中に緊急事態が起きた場合、この「緊急通報装置」があることを覚えておくと役立つはずだ。
「ピピッ、業務連絡。乗務員はすぐに連絡体制をとってください。14号車で凶器を振り回している男がいると情報がありました」(車掌)
「車掌長です、了解しました。後部車掌、パーサーは今、何号車にいますか?」
「後部車掌は16号車運転台です」
「マネージャーです。2号車にいます」
「サブマネージャー16号車にいます」
「了解しました。後部車掌は防犯装備をつけて14号車に急行してください。サブマネージャーさんは、救護用品を用意して14号車に急行してください。また、全日警(警備員)および鉄警(鉄道警察隊)も同乗しているので、私から14号車に向かうように連絡します」(車掌長)
「後部車掌です、すぐに向かいます」
「サブマネージャーです、救護用品を持ってすぐに向かいます」
「お願いします」(車掌長)