3.「自分とは違う」は間違い? 囚人ひとりひとりの人生に寄り添う視線
服役囚のことを、自分とは違う種類の人間だと何となく思っている人は多いのではないだろうか。
しかし、もちろん彼女たちは生まれた時から犯罪者だった訳ではない。“犯罪者”“服役囚”という言葉で一括りにしていると見えにくくなるが、彼女たちには一人ひとり違う顔と名前がある。それぞれが懸命に歩んできた人生というものがあり、本作でも刑務所内の人間模様と並行して描かれている。
動物と勘違いして子どもを銃殺してしまった女性、正義感からくる激しい怒りで殺人を犯してしまった苦労人の女性、真面目に生きたいと願うものの身寄りも学歴もなく犯罪で生きていくしかなかった女性、夢への挫折感と若さゆえの寂しさから判断を誤った女性……。
彼女たちの人生を一緒に振り返ってみると、犯罪者とそれ以外の人間を分けるものは、じつは単なる“運”でしかないのかもしれない、と思わされる。
人間は皆弱くて脆い存在だ。そして、心と体が弱っている時に正しい判断をするのはたとえ聡明な人でも難しい。うっかり転んでしまった時に、たまたま手を差し伸べてきたのが悪い人間か良い人間か。これだけでも、未来は変わってくる。
だからこそ、リッチフィールド刑務所の囚人たちが他人ごととは思えず、ドラマの世界に引き込まれてしまうのかもしれない。
このように、普通の日本人でも感情移入しやすいストーリーになっている。人間模様や心の描写が細かいところはさすが。過酷な環境で生き抜くヒントが欲しい方はぜひ観てみてほしい!
Netflixオリジナルシリーズ
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』
シーズン1~6独占配信中
文/吉野潤子