梨はもらうもの!?
このような背景があるから、鳥取県民にとって梨=二十世紀梨であり、普段口にするのもこちら。
「都市部はともかく、他の地域では梨は買うものじゃなく、貰うものという感覚です。近所の農家さん、親戚など、時期になるとあちこちから二十世紀梨が来ます。そのおいしさを知っているから、他に興味がわかず、赤梨もあまり食べない。だから梨といえば、二十世紀梨を思い浮かべるはずですよ」(山﨑さん)
本物はそれほど美味しいから?
「子どもの頃から食べなれているので、記憶への刷り込みもあるし独特の食感もひと役かっていると思います。美味しさを決める基準で重要な要素となる糖度は、11.1%ほどと低いのです。これは青梨全体の特徴でもあり、赤梨だと11%台後半から14%台に達する品種もありますからね。それでも食べ比べをしてもらうと鳥取県民は二十世紀梨が美味しいと答えます」(村田さん)
なしっこ館の試食コーナーでは食べた品種の人気投票を行うと、出身地により美味しいと思う基準が大きく偏るとの話もありました。
なしっこ館試食梨の平均糖度(平成24年度データ)
二十世紀梨から夏さやかまでが青梨。それ以降の右側は赤梨
鳥取生まれの品種も多数存在
梨の品種は、年々増えています。鳥取県だけでも大学や県で作ったオリジナル品種は代表的なものだけで10種ほどあり、最近とくに注目を浴びているのは上の表にも登場する「新甘泉(しんかんせん)」でしょう。赤梨の一種ですが、筑水×おさ二十世紀をかけあわせたもので、甘くてジューシー。それでいてシャリシャリ感があります。収穫時期は8月下旬~9月上旬です。
また、館内のフルーツパーラーには梨にこだわったスイーツがいくつかあり、中でも一番人気なのが東郷産の梨を使った「梨のソフトクリーム」(300円)。
なんと、年間の売り上げが1000万円にも達するといい、見た目の鮮やかさ、口にしたときのシャリッとした感覚は病みつきになることうけあい。年間を通して販売しているので、ぜひ一度、足を運んで食べていただきたい逸品です。
ほか、屋外の梨ガーデンには様々な品種が実際に栽培されているので、ぜひ間近に観察してみましょう。果樹園で見るような密集した畑状態ではなく、1本の木を大きく育てているので、とても迫力があり、農業の奥深さを垣間見ることができます。
取材協力 鳥取県/鳥取二十世紀梨記念館 http://1174.sanin.jp/
取材・文・写真/西内義雄(医療・保健ジャーナリスト)