試食オッケー。梨のテーマパーク
鳥取二十世紀梨記念館は鳥取県倉吉市にある、日本で唯一の梨のテーマパークです。
地元では「なしっこ館」の愛称で親しまれ、年間来場者数は約12万3000人(平成29年度)。入口のすぐ目の前には、直径20メートルにも広がる「二十世紀梨の巨木」が展示され、見る者を圧倒します。
ほか、梨の栽培技術、世界の梨の情報、大正時代から使われてきた農具の展示、日本の梨のルーツをたどるシアターも完備し、子供連れに人気の梨の不思議ガーデンもあります。
ここをひと回りすれば、鳥取と梨の関係から世界の梨の情報まで、一気に学ぶことができるわけですが、魅力はそれだけではありません。
キッチンギャラリーと名付けられたエリアには、年間を通して県内で生産している3種類の梨を試食することができ、これを目当てにやってくる人も少なくないとか。
しかも、入口前のミュージアムショップでは、8月~6月くらいまで、その時期のさまざまな梨の販売も行っているので、試食をして美味しかったものを買う観光客も多いとのこと。もちろん、扱っている梨はすべて県内産でJAを通して入荷。その際は糖度をしっかり計り、傷み具合もチェック。高品質なものを安心して買える穴場として、梨マニアの聖地にもなっています。
鳥取県が二十世紀梨の生産日本一の理由とは
今回は効率よく鳥取と梨の関係を学ぶべく、特別に山﨑嘉彦館長と村田謙司参事に案内をしていただいたところ、とても興味深い話がたくさん出てきました。その最たるものは、なぜ鳥取が日本一の二十世紀梨の産地になった理由です。
「鳥取県は梨の栽培に適していたわけじゃないのです。正直に言えば、傾斜地が多くほかに作るものがなかった。そこにたまたま二十世紀梨が入ってきて、やってみたら高く売れた。それでたくさんの農家が飛びついた」(山﨑さん)
それは全国的な傾向だったといいます。ところがしばらくすると病気に弱い品種のため、黒斑病が発生。全国的なブームはあっという間に去ってしまいます。さらに鳥取県内では自然災害も続き、農家には大きな打撃となりました。
「だけど、鳥取県の農家は諦めなかった。各方面の専門家に協力を依頼し、研究を続け、農家同士の結束を強めながら頑張った。それでようやく定着したわけです」(村田さん)
おかげで、最盛期は県内の梨の生産量のうち、二十世紀梨が占める割合は8割にまで達したといいます。