だんだん使われなくなっている印象がある「ことわざ」。「百聞は一見に如かず」や「塵も積もれば山となる」など幾つかを除いて会話で聞くことも少なくなり、いずれ政治家以外は誰も使わなくなってしまうかもしれない。
そんな廃れる一方のことわざの復権を目指して…というわけでもないが、昭和生まれの年長者ですら知らない、古くはあったことわざばかり350以上集めて1冊にした書籍『本当にある! 変なことわざ図鑑』(森山晋平著、角裕美画/プレジデント社)が刊行されている。
著者の森山さんは、「変なことわざは、世の中における1つの真実を教えてくれる」、「無駄なことほどおもしろく、無駄なことほどタメになる」という理由から本書を執筆したという。「仕事にも使えません」と言うが、なかには自分が上司になったら、1回は使ってみたくなる含蓄あふれることわざもある。
今回はそうしたことわざの中から、5つをピックアップして紹介したい。
「商いは牛の涎(よだれ)」
意味は「商売は細く長くコツコツとつづけることが大切」
森山さん:「口から長くたれるウシのよだれで、商売のコツを表現したことわざです。ウシは1日に180リットルほどのよだれを出すのだそうで(人間は約1.5リットル)。胃袋が4つあり、食べた草を胃の中で発酵させ、口の中に戻してよだれと混ぜてから、また飲み込んで消化します。これを反すうといいます。趣味、勉強……商売に限らずどんなことも、ただ『やる』よりやりつづけることが大切ですね」
「小言は言うべし 酒は買うべし」
意味は「間違いは叱り、いいことは褒めるべき」
森山さん:「叱るときはビシッと叱り、褒めるときは酒を買ってしっかり褒めよう」ということを表しています。小言ばかりでは相手に不満がたまり、褒めるだけでは甘やかしになる……そのバランスが難しいですね。相手や状況によりますが、自分が上の立場のときは、叱る量より褒める量を多めにした方がいい関係を築くことができ、相手の成長にもつながるかも。「お世辞」ではない正しい褒め方を身につければ、自分の成長にもつながります」