汗のニオイは悪い汗が原因の可能性も
続いて、もう一つの原因として考えられる、汗のニオイについて。五味先生によると、汗には良い汗と悪い汗があり、ニオイを発するのは悪い汗だという。
●悪い汗のニオイ対策
「良い汗は無臭ですが、悪い汗は雑菌などが繁殖しやすい成分が含まれているため、汗をかいた直後からニオイが発生します。原因は汗腺のろ過機能がしっかり働いていないこと。悪い汗には塩分やミネラルなどの血しょう成分も含まれているため、ベタベタしていますし、一緒に排出されてしまうので雑菌が繁殖しやすく、ニオイが生じます。
対策のポイントは、汗腺トレーニングです。エアコンに一日中頼る生活を続けていると汗をかく機会が減り、汗腺機能が弱っていきます。できるだけエアコンの温度は高めに設定し、日常的に有酸素運動を取り入れて汗を自然にかくようにすることが大切です。今年の夏は暑いですから熱中症予防のために帽子着用、水分・塩分摂取などはしっかり対策し、長時間の運動は避けながら、それでも気持ち良い汗をかきましょう。良い汗はサラサラしています」
●出てしまった汗の対策
「出てしまった汗の対策は、汗をできるだけ蒸発させることです。それには衣類の素材選びがポイントになります」
×ポリエステル…疎水性の繊維は、表面に凝結水がつきやすいため、汗が衣類に貯留。
△綿…親水性が良いが速乾性が悪いため、汗が衣類に貯留。
〇機能性の合成繊維…吸水性と速乾性に優れているため適している。また綿の吸湿性の長所と合成繊維の速乾性の長所を合わせた、綿と合成繊維の複合繊維もよい。
ちなみに綿や麻でも通気性の良いものであれば問題ないという。
「ワキの汗が気になる場合には、デオドランド剤を使用するなどして汗を止めてもいいでしょう。ただ胸や腕などは身体の熱を下げるために汗をかくため、汗を止めてはいけません。熱中症にもつながります。その点、ワキ汗は体温調整には関係がないため、汗を止めても問題ありません。ワキ以外の胸や腕にはデオドランド剤はかからないようにしましょう」
夏のワイシャツやTシャツから雑巾臭がしないよう、日頃からシャツと汗の両方の予防策を実践しよう。
【取材協力】
五味常明先生
医学博士、流通経済大学 客員教授、日本心療外科研究会代表、体臭・多汗研究所所長、五味クリニック院長
1949年、長野県生まれ。一ツ橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。 99年からは、ケアマネージャー(介護支援専門員)として、デイケア事業や、高齢者介護の現場でのニオイのケアにも取り組む。
http://www.gomiclinic.com/
山縣義文さん
ライオン株式会社 お洗濯マイスター
博士(工学)、繊維製品品質管理士
家庭向けおよび業務用洗浄剤の研究・開発に約30年携わる。日々のお洗濯を楽しく、快適に行えるよう、技術に基づいたノウハウを発信している。
https://lidea.today/articles/washing
取材・文/石原亜香利