名作揃いのアメドラの中でも異例の大ヒットとなっているのが、歴史ラブロマンスの『アウトランダー』だ。原作は、米国人作家ダイアナ・ガバルドンの長編小説『アウトランダー』シリーズ。累計2500万部を超え、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーにも選ばれた名作だ。
時を超えて結ばれ、世界を股にかけ旅する“運命の恋人たち”による壮大なスケールのラブストーリーが展開される。
今春には、シーズン5&6の更新が同時に発表されるなど、ますます勢いを増している。
『アウトランダー』は、なぜこんなにも多くの人々の心を惹きつけてやまないのだろうか?そこで今回は、その魅力を分析してみたい。
『アウトランダー』とは?
米国の小説家ダイアナ・ガバルドンの長編小説『アウトランダー』が原作の米英合作ドラマ。
第二次世界大戦後とその200年前の英国・スコットランドを中心に物語が展開され、シーズン2ではフランス、シーズン4では18世紀半ばの米国が舞台となる。
主人公は、大戦中に従軍看護師として戦場で働いていた英国人女性クレア(カトリーナ・バルフ)。終戦後に歴史学者の夫フランクと一緒にスコットランドへ旅行中、不思議なストーンサークルでタイムスリップしてしまう。そこで出会ったのが、“運命の人”ジェイミー(サム・ヒューアン)だった。
農夫兼戦士としてスコットランドのために戦う、勇敢な年下の男。英国人将校から屈辱的で惨い仕打ちを受けたにもかかわらず、同じ英国人である自分を尊重し守ってくれるジェイミーに、クレアは次第に心惹かれていくのだった。
イギリスとスコットランドの間には、長年の根深い確執がある。歴史学者の夫を持ち未来からやってきたクレアは、1746年カロデンの戦いでジャコバイト軍(スコットランドを基盤とする反革命勢力)がイギリス政府軍に大敗することを知っていた。そのため、ジェイミーらに事情を説明し、スコットランドを守るためにもジャコバイト軍の反乱を阻止しようと奮闘する。
1.まるで大人向けの少女漫画。ロマンチックな演出で女性の心をわし掴み
まず、このドラマの最大の特徴は、まるで大人向けの少女漫画のようなラブロマンスだ。
結婚して夫を持つ女性が、タイムスリップ先で美しく逞しい年下男性と恋に落ちるという全世界の既婚女性の妄想を映像化したような(?)あらすじ。甘い少女漫画と重厚な歴史ドラマを組み合わせたようなロマンチックで非日常的な作風が、世界中のファンの心をガッシリと掴んでいるようだ。
クレアとジェイミーが愛を確かめ合う場面は、“ドラマ史上最も美しいラブシーン”だとして各方面で絶賛された。
ジェイミー役のサム・ヒューアンのインタビューによると、まず先にサムのジェイミー役が決定、次にサム立会いのもとクレア役を選ぶオーディションを行ったという。オーディションでは何人もの女優と実際にラブシーンを演じなくてはならず、大変だったそうだ。
しかし、カトリーナ・バルフが入ってきた瞬間、全員が「この人だ!」と直感したと語っている。元ファッションモデルのバルフは、華奢な体型ながら野生的な魅力も兼ね備えている。気性が荒く情熱的なクレア役にぴったりだ。
とりわけ面白いのは、タイムスリップ先で登場する“稀代の悪党”英国人将校ジャック・ランダルはよりによって夫フランクのご先祖様で顔も瓜二つだということ。英国人俳優のトビアス・メンジーズが一人二役で迫真の演技を見せている。
このジャック・ランダル、とにかく卑劣で憎たらしく海外ドラマ全体で見ても最悪レベルの悪役だ。ジェイミーをはじめスコットランド人を徹底的にいじめ抜き、人間の尊厳や愛情を踏みにじり精神を破壊することに快感を覚える強烈な性的サディストとして描かれている。
現代に残してきた歴史学者の夫フランクはごく普通の優しい男性なのだが、ジャック・ランダルのせいでだんだんフランクまで憎たらしくなってくる。
メンジーズの演技力のおかげで、筆者は何も悪いことをしていないフランク(というかむしろ被害者)の顔を見るだけでも嫌になってしまった。メンジーズはインタビューの中で「ジャック・ランダルは特別なモンスターではない」として、人間誰しも似たような一面を持っていると鋭い考察をしていた。面白いドラマには、演技派俳優渾身の悪役が欠かせないのだ。
このように、夫ソックリの男が極悪人として登場し魅力的な年下男性との仲を引き裂こうとするあらすじも、熱狂的な女性ファンを獲得した理由のひとつなのではないだろうか……。