削られてしまった機能も多数、ドコモカスタマイズの○と×
本機は、ドコモからHW-01Kという型番を付与されて発売されている。ハードウェアスペックのほとんどはグローバル版のP20 Proと同じだが、一部にドコモ向けのカスタマイズが施されている。目につきやすいスペックとしては、ネットワークがドコモに最適化されているお陰で、下り最大988Mbpsを実現できているところが挙げられる。確かに、通信速度は高く、条件さえよければ500Mbpsを超えることもあった。
グローバル版や日本で発売されているSIMフリー版が未対応となる、ドコモのVoLTEに対応しているのも、ドコモ版ならではのメリットといえる。VoLTEが利用できるメリットは、クリアな音声のほか、CSフォールバックせずに済むため、発着信がスムーズで、通話しながらLTEで高速通信できる点だ。ドコモ同士であれば、非常に音がよく、細かな数字などまできっちり聞き取れる。おサイフケータイに対応しているのも、ドコモ版ならではのメリットといえるだろう。
こうしたメリットがある半面、ソフトウェアの一部がカスタマイズされすぎているきらいもある。たとえば、ホーム画面のユーザーインターフェイスはその1つ。通常のファーウェイ端末は、アプリ一覧を表示する「ドロワー」のあり、なしを選択できるが、P20 Proのドコモ版はドコモのホームアプリである「docomo LIVE UX」を搭載するために、ドロワーあり版が省かれてしまっている。
実際には、ショートカットアプリを使えばドロワーあり版のファーウェイ製ホームアプリを呼び出すことはできるが、設定画面から選択できないため、難易度はかなり高い。キャリア製のホームアプリは、サポートを簡略化するなどのメリットはあるものの、端末の個性は完全に失われてしまう。ここは、しっかりグローバル版と同様のものを残してほしかったところだ。
ホームアプリはまだ選択できるからいいが、電話アプリはドコモ製のものしか選択できない。些細なことに思えるかもしれないが、フォントや文字のサイズなどのデザインテイストがファーウェイ製のプリインストールアプリとまったく異なるため、かなり浮いた印象を与えている。スマホといえども、やはり電話だ。人によってはかなり利用頻度が高い機能なだけに、電話アプリがドコモ製のものしか選べないのは残念だ。
ほかにも、ハードウェアとして赤外線を搭載しているのにリモコンアプリがなかったり、スケジューラーがドコモ版のものしか選べなかったりと、SIMフリー版のファーウェイスマホと比べると「おや?」と思う箇所が複数ある。初めてファーウェイ端末を使った人は「こんなものか」と思うかもしれないが、過去にSIMフリーのファーウェイ端末を使ってきた人は違和感を覚えるところだろう。
さらにいえば、P20 Proには、ファーウェイ独自の高速充電技術が採用されている。そのため、高速充電を利用するには純正のチャージャーが必要になるが、これも同梱されていない。ハードウェア自体は高速充電に対応しており、Mate 10 Proなどのチャージャーを流用すれば超高速充電になるが、家電量販店やドコモショップで気軽に買えるものではないだけに、同梱すべきだと強く感じた。
グローバル版と共通仕様になるが、microSDカードに非対応なのはやはり不便。本体のストレージは128GBと多いが、写真をよく撮る端末なだけに、次機種以降では改善を望みたい。筆者はこれまで撮ってきた写真をすべてGoogleフォトに写したが、容量が足りなくなるのは心配だ。3.5mmのイヤホンジャックも同様で、変換ケーブルが必要になるのは不便。こうした点は、iPhoneを追従しないでほしい。
3.5mmのイヤホンジャックが非搭載。音楽を聞くとき、やはり不便
久々のドコモ端末ということもあり、カスタマイズがこなれていないなど、上記のように不満点もあるが、やはりカメラのクオリティは高く、他の機種よりも1つ上のステージにいるという評価に変わりはない。パフォーマンスも高く、ユーザーインターフェイスに目をつぶれば、快適に操作できる。不満点の多くはソフトウェアの改良で解消できるだけに、今後のアップデートにも期待したい。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★
撮影性能 ★★★★★
音楽性能 ★★★★
UI ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
バッテリーもち ★★★★★
持ちやすさ ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。