定住者のいる地域の中で、世界で最も冬の寒さが厳しいのは、シベリアのサハ共和国にあるベルホヤンスクという街。北極圏内に位置し、冬の気温がマイナス50度台はあたりまえ。マイナス67度という世界記録は、いまだ破られたことのない「寒極」の地だ。
日本人でここを訪れたのは、史上10人しかいないそうで、まさに知る人ぞ知るワンダーランド。そこへ、「マイナス50度の世界とはどんなものか」という好奇心を満たすため、11人目の日本人として永久凍土を踏みしめたのが、アーティスト&イラストレーターとして活躍する、まえだなをこさんとその一行だ。
まえださんは、ベルホヤンスクを訪れてのでき事を、コミックエッセイ風の旅行記『世界で一番寒い街に行ってきた: ベルホヤンスク旅行記』(kindle電子出版)に記している。それを読むと、ベルホヤンスクとは、気候だけでなく生活や文化も日本とは全く違う別天地ということが分かる。
今回は、ベルホヤンスクという街がどんなところなのか、概要的な部分をまえださんに伺った。
Q:北海道に住んでいる人でも、気温がマイナス3度くらいになると「寒い、死ぬ~」とぼやきます。それよりも50度も低いと言われても実感はわかないのですが、どれほど寒いものなのでしょうか?
まえださん:外出時は防寒着をしっかり着込み、たいていは車で移動していたので「寒い!」と体感することはあまりなかったです。
ただ、野外のトイレに入ったとき、金属の鍵を触ってしまい、一瞬で指が軽い凍傷になったり、帽子を被らないで歩いていると、街の人が駆け寄ってきて、帽子をかぶるように言われます。これは「脳が凍る」からだそうです。注意しないと危険な土地なんだなと実感しました。
吐く息で髪の毛やまつ毛も凍りましたし、魚は釣り上げた途端急速冷凍です。
あとは、街の商店のアイスのケースの温度はマイナス20度なのに、外はマイナス50度で矛盾を感じました。外に放置でいいじゃんと思いましたが、外の気温だと凍りすぎて歯が折れるかもしれないですね。
ベルホヤンスクでは熱湯が瞬時に霧になるなど、驚きがいっぱい(『ベルホヤンスク旅行記』より)