このタイトルだけで「おっ」と思ってくれた貴方は、きっと熊本県民かプロの料理人をお見受けしました。そうです、皆さんの郷土愛と料理人魂をグイと掴む、あの赤酒のお話です。
もろみに木灰を加え、保存性を高める
赤酒とは清酒の一種。醸造した「もろみ」に木灰を加え、酸敗を防ぎ、保存性を保つ灰持(あくもち)という製法により生み出される日本古来の酒のこと。灰で酒の酸を中和させるため、phが中性~微アルカリ性(ph7.2)に変わるのが大きな特長だ。
微アルカリ性に変化することで酒の成分中のブドウ糖は急速に褐変する。色は赤黒く変化し、甘さも際立つ。ひと口含めば濃厚な甘さに驚愕する。
参考までに、熊本の赤酒のほか、鹿児島の地酒(じしゅ)、出雲の地伝酒(じでんしゅ)が日本三大灰持酒と呼ばれ、地元では甘味を生かした料理酒、つまり「みりん」的な使い方をしてきた歴史がある。
みりんと何が違う
熊本では赤酒を料理に使うことが多い。一種独特の赤酒文化が根付き、おいしい料理を作るなら赤酒は必須アイテムといっても過言ではない。
一般的なみりんよりも高価なので、ご贈答用にも喜ばれる。なぜそんなに喜ぶのか調べると、よく聞かれるのが
「赤酒で煮物を作るととてもまろやか」
「魚や肉がやわらかく仕上がる」
「照りや香りが美しい」
など、微アルカリ性ならではの特性と、米麹から醸し出される上品でキレのよい甘味成分とうま味を評価する声が多い。つまり、腕に覚えがある人ほど好む傾向にある。各地の料理人、調味料メーカーからも注目を浴び、隠し味として赤酒を利用していることも珍しくない。