Impression
セパレートアンプのメリットは左右の信号が物理的にも分けられているため、チャンネルセパレーションが良く、正確な音像定位が得られ、左右の広がり、前後の奥行きなどの音場感にすぐれていることだ。これがペアでU1万円のパワーアンプで得られるのか。正直、半信半疑だったが、音を聞いた瞬間に疑問は氷解した。
オペアンプに超高級な「MUSE 01」を入れた『FX-AUDIO-FX502J-S』よりも音像定位がシャープで、かちっとした輪郭の音だ。S/N感も良く、手嶌葵「明日への手紙(ドラマバージョン)」(96kHz/24bit)を聞くと女性ボーカルに透明感がある。いつも聞いているYuji Ohno & Lupintic Five with Friends「BUONO!! BUONO!!/THEME FROM LUPIN III 2015〜ITALIAN BLUE ver」(48kHz/24bit)も録音が良くなったのかと錯覚するほど左右の音場が広く、センターの音に厚みがある。さすがセパレートである。もっともアッテネーターに高音質タイプを使っているので、この点でFX502J-Sは不利になる。またFX-501Jはアッテネーターの音色の影響を受けてやや硬質な音になったと思われる。
ゲインの切り換えでも音色が変化する可能性があるので試してみた。一般的にはゲインを下げた方がS/Nが良くなるため、必要最低限にゲインは低く設定する。高くすると能率の高いスピーカーでは残留ノイズが聞こえるようになる。また、可変抵抗を使ったボリュームを使う場合、ボリュームはMAXに近付くほど音質的に有利なので、ゲインは低い方がいいのだ。聞いてみると最も低ゲインの20dBでは透明感の高い音になるが、低域のドライブ感が物足りない。高ゲインの36dBではほとんどのスピーカーで無音時にノイズが聞こえるだろう。つまりオススメは36dBか32dBである。どちらがいいかは試聴して決めていただきたい。
デスクトップの隙間にもセッティングできるコンパクトさがいい。「Mac mini」の上にも載せられるのだが、Macが発熱するので実際は左側に置いている。
アッテネーターまでは自作のRCAケーブルで最短距離で接続。セパレートなのでスピーカーの直近に置いてスピーカーケーブルを短くするというセッティングもありだ。
Judgment
NFJ『FX-AUDIO-FX-501J』は、驚くべき実力を秘めたモノラルパワーアンプである。パワーアンプ殺しと言われた拙宅のApogee『Duetta Signature』を通常の音量なら鳴らせる。Apogeeは2Ω負荷以下にもなるオールリボンの平面スピーカーなので巨大なパワーアンプでも音を上げて保護回路が働くのだが、本機は結構、頑張ってくれる。もちろん音量が出せるだけでなく、その音場感の良さも引き出してくれる。クラスDアンプ恐るべしだ。ペアで約9000円は超ハイコスパでライバルは見当たらない。セパレートアンプに興味のある人、愛用のスピーカーの音をもっと良くしたい人にオススメ。NFJからペアになるプリアンプの登場が待たれるが、現行モデルから『FX-AUDIO-TUBE-01J』という真空管ラインアンプと組み合わせてもいい。
写真・文/ゴン川野
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!