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あきらめていた大人こそ参加すべき「自転車の乗り方教室」

2018.05.27

■この教室で子どもたちが学べること

 午前10時半を過ぎて、見事カーブを曲がれるようになった子どもたちがペダルをつけて練習を始めた。

 一方、大人の参加者のうち自転車に乗れるようになった方が、教室が開かれている一帯をぐるっと一周する練習を始めていた。さっきまでは顔を真っ赤にして漕いでいたが、今では笑顔で自転車を乗りこなしている。まだまだ危なっかしいノロノロ運転だが、とても楽しそうだ。できないことができるようになると、達成感がわく。誰でも嬉しくなる。いいなー、気持ちいいだろうな。

 途中で休憩を挟みながら、午前の部は12時まで続いた。およそ2時間半の練習だったが、今日から自転車デビューする大人や子どもが続々と現れ、それぞれが嬉しそうな顔をしていた。土田さんいわく、参加する大人の8割が、子どもの3割から5割ほどが、1回の教室で乗れるようになるそうだ。

 ちなみに、この教室では自転車に乗れるようになった子どもたちに修了証を渡している。

 この修了証が欲しくて頑張る子どももいるそうだ。取材ということで、土田さんのアドリブで特別に女の子へ授与して頂いた。周囲では拍手が起き、女の子はニコニコして飛び跳ねた。見ているこちらもほほが緩む。

 最後に、土田さんからこんなお話を聞いた。

「この教室ではね、子どもが転んでも起こしに行かないの。親と一緒に練習すると、倒れたときに子どもが甘えちゃうでしょ? でもそれじゃ乗れない。自分の力でしっかり立って乗れるように見守ってあげるの」

 知らない人たちと一緒に練習することで、自分一人で頑張る力を身につける。だからたった2時間半の練習で、自転車に乗れる子どもが出てくるわけだ。そういった要因もあって、北は北海道から、南は沖縄から、東京観光を兼ねて多くの人々がこの教室を訪れる。

「それとね、子ども同士が自転車でぶつかったときは「自分からごめんねって言おうね」と促してあげるの。ぶつけられた方の子どもは「いいよ」って許してあげる。そんなことも教えてあげたい。できるだけ、だけどね。これが人との関わり方だから」

 ただ自転車の乗り方を教えるだけじゃなくて、これから社会に出る子どもたちが身につけたい礼儀と優しさも、さりげなく伝える。笑顔で話す土田さんから子どもを想う心が伝わった。

「大人も参加できる自転車乗り方教室」というテーマで訪れた筆者だったが、「今の時代にもこういう場所があるんだなー」と、取材帰りは心がほっこりしていた。まだ自転車デビューしていない方は、ぜひこの教室に足を運んでほしい。きっと思う存分練習できるはずだ。

【取材協力】
日本サイクリング協会
https://www.j-cycling.or.jp/index.html

取材・文/いのうえゆきひろ

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