■自転車の乗り方のコツ
この教室では、ペダルのない自転車でバランス感覚を身につける練習からスタートする。
自転車はバランスの乗り物だ。足を着けたい方に、自転車が倒れそうな方にハンドルを曲げることができれば、あとは30分で乗りこなせてしまう。乗り方の練習とは、バランスの練習に近い。
ペダルを外して練習すれば、地面を蹴る足にペダルが当たることもないので、スイスイ進みながらバランス感覚を養える。この教室の自転車は、ペダルが簡単に取り外しできるので、乗り方のコツを存分に練習できるのだ。
というわけで、さっそくその練習が始まった。
子どもたちがヘルメットを被って小さいコースを一生懸命くるくる回る。しきりにシャッター音が鳴り、我が子の雄姿を収めようとする親たちが声援を送る。微笑ましい。あたりが運動会のような雰囲気で包まれる。
この日は3か所に分かれて練習が行われ、そのうち1か所では大人たちが集まって自転車のコツを学んでいた。
筆者が数えたところ、大人の参加は10人ほど。子どもたちのグループとは違い、こちらは少々恥ずかしそうな様子を見せている。しかしその姿を笑う者は誰もいない。みんな乗れない者同士、必死で自転車と向き合う。
練習を眺めていると、大人も子どももカーブで苦戦するようだ。直線でスピードをつけて、ブレーキで調整しながらカーブで上手にハンドリングする。これができないとポールにぶつかったり、曲がる前に失速して足がついてしまう。
やっぱりカーブは難しい。筆者も上手に曲がれなくて何度も膝をすりむいた子ども時代を思い出して、つい微笑んでしまった。
また、インストラクターのみなさんはとても優しい。子どもが転ばないようにコースの中央で見回りながら「頑張れ~」と声をかける。失礼だが、まさしく孫を見つめるおじいちゃんだ。
一方、大人にも「ダメだよ~自転車はある程度スピード出さないと運転が難しいよ~」と、笑顔で声をかける。いいなー、この雰囲気。誰に急かされるわけでもなく、自分が自分のために一生懸命努力する。そしてそれを優しく見守る人がいる。これこそ、「教室」の在り方だ。