■元込め式を確立したスナイドル銃
だが、先述のようにエンフィールド銃は先込め式である。攻撃力は上がってはいるが、射撃動作の基本は火縄銃と変わらない。
銃を劇的に変えたもうひとつの要素、それは元込め式だ。
銃身の先端からではなく、後尾から弾丸を装填することにより連射速度を向上させるというものである。元込め式ならば、射手は銃を構えた状態から姿勢を大きく変えることなく次弾を込めることができる。
戊辰戦争の頃の日本には、エンフィールド銃に混ざってスナイドル銃も使用されていた。これは元込め式で、蝶番式の装填装置が付けられている。ここには弾丸と火薬が一体になった薬莢を入れる。
上の写真は、発射能力のある銃ではなく無可動実銃というものだ。銃身内に鋼鉄製のインサートが詰められていた。また、シカゴレジメンタルスのスタッフによると銃の装飾からして「兵ではなく将校にプレゼントされたものではないか」ということだ。
スナイドル銃は弾丸と火薬が分離している旧来型の銃と比べると、装填に要する時間は大幅に削減される。しかし、弾丸の装填数は1発のみ。そこで今度は、銃内部に予め数発の弾を装填して連射を可能にしようという動きが起こった。
■「最強の7連射」スペンサー銃
2013年の大河ドラマは新島八重を主人公にした『八重の桜』だったが、主演の綾瀬はるかがスペンサー銃という武器を抱えて戦うシーンは話題になった。
劇中の八重の活躍通り、スペンサー銃は連射ができる武器である。銃床から7発の弾丸を込めることができる仕組みだ。
弾丸を薬室へ装填するには、引き金の部分に付いているレバーを動かす。これで排莢と次弾装填ができる。何しろ7発の連射だから、その火力は先込め式のエンフィールド銃の比ではない。
それこそ、ゲベール銃装備の小隊ならばたった数挺のスペンサー銃でも十分に対抗できるのではないか。何しろ、射程距離からしてスペンサー銃はゲベール銃を大きく上回っている。その上、7連射が可能となると、もはやゲベール銃の出る幕はない。しかし戊辰戦争の会津戦線では、ゲベール銃からスペンサー銃まで新旧の兵器が入り乱れるように運用された。
ちなみに、『八重の桜』の撮影で用いられたスペンサー銃はもちろん実銃ではなく模造品だが、それでも実銃と同じだけの重量があったらしい。綾瀬はるかは、それを担いで走り回っていたわけだ。相当な労力だったことは想像に難くない。