キーボード入力が当たり前になった今の世でも、多くの人はうまい手書き文字へのあこがれがある。長く続いている美文字ブームはその表れで、最速の上達をうたう美文字練習帳がいろいろと出ており、通いのペン字講座も人気がある。
そんな中、美文字とはまた異なった「艶文字」(つやもじ)をすすめるのが、書家の西村真翔さん。著書に、各ひらがなを艶文字で書くためのコツを解説した『美文字より上品で色っぽい! 艶文字ひらがな練習帳』(文藝春秋)がある。
西村さんによれば、優等生的ながらやや面白みに欠ける美文字に対して、艶文字は「洗練された色気のある、大人の文字」。筆で書いたような品格があり、書き手の「印象まで大幅にアップさせてしまう」書体なのだという。本書ではひらがなの48文字のみを扱うが、ひらがなは文章の70~80%を占める。そのため、ひらがな艶文字をマスターしただけで、文章全体が見違え、非常に学びがいがある。
さて、その艶文字の習得方法だが、やみくもな「なぞり書き」やお手本の真似書き(臨書)はすすめていない。これだと、お手本がなくなった途端に書けなくなって、なかなか身につかないからだという。それを防ぐため、本書では3つの基本の心得があり、そして(「あいうえお」順でなく)効率よく学べる順に掲載され、細かい解説のついたひらがなの書き方が載っている。
■まずはSラインの練習
艶文字ひらがなには、丸く書いた後、まっすぐに書くという線の引き方が多くあり、これを「Sライン」とよぶ。まずは、Sラインの書き方を練習するのが上達の早道。
そのやり方は、国語の8マスノートの各マスを縦に4等分する線を入れ、(1)のように曲線部分を赤ペンで書き入れる。次に(2)のように、(1)で引いた赤い曲線部分を直線でつなぐような気持ちで、曲線→直線→曲線→直線→曲線…と頭を切り替えながら、Sラインを引く。慣れてきたら(3)のように地の赤い部分だけ直線になるようにフリーハンドで書く。なめらかに書けるようになったら、実際にひながらを書いてみよう。