■入院までの日数と、手術まで
筆者が選んだ大規模病院は心臓手術に定評があり、なかなかベッドが空かず入院まで1か月ほど待たされた。この待っている時間が一番落ち着かなかった。
病棟は循環器外科の大部屋。平均年齢は60代半ばくらいと高め。ほぼ全員が弁膜症かバイパス手術のために入院してきた人たちばかりだ。病棟の雰囲気はさぞかし暗いと、そう思われるのではなかろうか。
ところが、これらの手術の成績は当時でも限りなく100%に近く、手術をすれば元気になれることから、思った以上に病棟の雰囲気は明るかった。
入院中は手術の準備として、自己血貯血(約800cc)、頭部・胸部CT、腹部エコー、HIV検査などを済ませ、剃毛後、最終的な検査(手術)として心臓カテーテルが行われた。
筆者は太腿からのアプローチとなり、大動脈弁までカテーテルを運び、造影剤を入れて逆流の様子を確認すると、やはり重症の部類。同時に心臓を取り囲む冠動脈の詰まりもチェックし、こちらは詰まりなし。ということで手術確定となった。
■最後の選択
手術前日、家族と共に最終的な説明を聞いた。話で多くの時間が割かれたのは、リスクについてだ。いくら100%近い成功率とはいえ、絶対はない。ひとつひとつ例を出しながら、この場合はこう解決しますという内容が続く。家族は顔をしかめていたが、本人はまな板の鯉の心境。かなり冷静に聞いていた。
しかし最後に人工弁の種類(生体弁or機械弁)のどちらを選ぶかと改めて聞かれると、大きく気持ちが揺れ動いた。筆者の年齢なら機械弁を選ぶのが主流であり、医師ともその線で話が進んでいたが、本当にそれでいいのか……。
少し時間をもらい考えた末、やはり再手術の可能性の低い機械弁を選択した。
機械弁と生体弁の違いは、こちらを参考にしてほしい。
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イラスト協力/(一財)北海道心臓協会
文・写真/西内義雄(医療・保健ジャーナリスト)