被災時に必要なものをまとめた防災セット。しかし、「不要なものが入っていることも多い」と災害の専門家は言う。はたして、本当に使えるものはどれなのか?
◎必ず起こる災害に個人・家庭で備えるべし
「首都直下型地震が起こる確率は、今後30年間で約70%と言われています。それがどれくらいの規模になるかはわかりませんが、ほぼ確実に起きるのです。来るべきその時に備えていない人は、間違いなく後悔することになります」
そう話すのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さん。都市部が被災した場合、救援物資の調達、搬送などの協力態勢はできている。それでも各家庭でも備えは必要だ、と和田さんは言う。
「道路が壊滅すると物資の補給は途絶えます。それが復旧するのに最低でも3日はかかるので、その間の備蓄が必要なのです」
ならば避難所に行けば、何とかなるだろう、と考える人もいるだろう。だが、和田さんはその考えにも警鐘を鳴らす。
「避難所は必ずしも快適な環境ではないからです。食料などの配給には長い列ができるし、いざこざも起きる。それに感染症の心配もあるなど、実にストレスの多い場所です。だから私は〝自宅で待機できる態勢を整える〟ことを勧めています。避難所は家が倒壊した場合に行く場所と考え、そのために簡易トイレや水、食料などを備えておくべきなのです」
備蓄の手始めに便利なのが、被災時に必要なものをまとめた「防災セット」。しかし、それだけでは万全ではないと和田さん。
「各社の製品を見ると、まず〝自宅で待機するために使う〟のか、〝避難所で使う〟のか明確になっていないものが多いのです。例えば、自宅待機は別として、避難所には基本的に水と食料があるので、実はそれほど必要ではありません。防災セットを〝ベース〟にし、必要なものは足す、要らないものは省いて使ってください」
結局、自分を守れるのは自分だけ。被災した際の状況を想像して、自宅では何が、避難所では何が必要なのかを見極め、本当に使える防災セットを作りたい。
災害危機管理アドバイザー
和田隆昌さん
全国の自治体に対しても講演会やアドバイスを行なう防災の専門家。アウトドアの知識も豊富でサバイバル術も得意。