■医師がすすめるカラダにイイこと〜教えて!Dr倉田〜
春から、職場や地域で健康診断を受ける方が増えます。「健康診断とは何か?」、「検診や人間ドックとの違い」、「検査前日の過ごし方」についてご説明していきます。
■健康診断とは何か?
健康診断は、現在の健康状態がどのようなものかを明らかにし、①病気の早期発見②将来病気になる危険因子を見出して、生活習慣の改善などを行い、病気の予防や健康維持・増進を図ることを目的としています。
●健康診断の長い歴史〜結核対策がはじまり〜
現代の健康診断では、主に「生活習慣病対策」に重点が置かれています。皆さんが入ったことや目にしたことがある、レントゲンバス(巡回健診車)の正式名称は「医療防疫車」です。「防疫」は、「感染症の蔓延を防ぐ」意味ですが、ここで言う感染症は主に「結核」を指しています。健康診断は元々「結核対策」として行われてきました。
結核は、平安時代の『枕草子(著者:清少納言)』、『源氏物語(著者:紫式部)』でも記述があり、20世紀まで私達を苦しめる病気でした。移動距離が少ない時代は、感染も親や兄弟、近所の人に限定されていました。「結核菌」という細菌が感染原因なのですが、当時は暴飲暴食や消化不良が原因ではないかと考えられていました。
結核が社会や国家を揺るがすのは18世紀。産業革命による工業化で、集団生活や過酷な労働環境から結核に感染する人が増え、都市部から故郷に帰った人を介して、社会全体に蔓延することになりました。日本でも小説「あゝ野麦峠」の中で結核に悩む人々が描かれています。結核は20世紀半ばに抗結核薬が開発され、不治の病から治る病気になりました。
■検診や人間ドックとの違いとは?
●「検診」って何?
健康診断(健診)と紛らわしい物に「検診」があります。「検診」は、特定の病気の早期発見を行い、早期治療することが目的で、よく知られているのが「がん検診」です。「がん検診」の中には、胃がん検診、大腸がん検診、肺がん検診、乳がん検診、子宮がん検診、前立腺がん検診など多くの種類があります。
●「人間ドック」って何?
人間ドックは、健康診断と検診の両方を目的にしています。通常の健康診断より、検査の種類や内容も多い特徴があります。脳の精密検査を行う「脳ドック」、女性向け「レディースドック」など目的に合わせたものも登場しています。
「人間ドック」の語源は、船の修理や検査などを行う場所「ドック」が語源です。