■社会が変わっても人間の悩み・苦しみは変わらない。お墓やお寺の役割とは
社会の変化による“墓離れ”“お葬式離れ”が進んでも、生と死にまつわる人間の悩み・苦しみがなくなることはない。
住職は、今後はお寺も時代に合ったあり方を模索していくことが必要だという。
「そもそも蔵前陵苑設立のきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災でした。本堂が半壊してしまい、皆さんが集う場所としてはかなり危険な状態になってしまったのです。震災の後も関東では余震が続いており、その度に崩れるのではないかと不安な気持ちを抱かれている方も多かった。そこで、このような震災が起きた時の心の拠り所になり、復興の拠点となるような耐震性の高いビル型の納骨堂を作ろうということになりました。
また、現代人の悩みに仏教の教えを応用した講座も定期的に開催しています。とくに若い世代の女性に好評をいただいています。先日は“人間関係は素晴らしいが、しんどい”というテーマで行いました。お釈迦様の時代と現代人の悩みは、それほど変わらないものです。
このほかにも、浅草の外国人観光客向けの写経・読経イベントや落語会、婚活イベントなども開催しています。
もともとお寺は、地域の人々が気軽に集える場所でした。昔の日本では、若い男女がお洒落をしてお寺の行事に参加し、恋人を探すことも多かったそうです。意外に思われるかもしれませんが、これがお寺本来の姿。楽しいことを求めて気軽な気持ちで足を運べる場所だったのです。
生活に密着した憩いの場であり、何かあった時には心の拠り所となる。これからのお寺には、そういった機能が求められていると思います」
【取材協力】
釋朋宣(しゃくほうせん)・・・満照山眞敬寺(まんしょうざん・しんきょうじ)第17世住職。浄土真宗の満照山眞敬寺では、創建550年記念事業として2017年10月に室内墓所を併設した「満照山 眞敬寺 蔵前陵苑」を再建。蔵前陵苑は、ICカード1枚で気軽に参拝が可能な自動搬送式の参拝システムを採用し、同施設内で葬儀・法要まで執り行えるワンストップ型の納骨堂。宗旨宗派は不問。蔵前という情緒溢れる下町に立地し、石材・木材・漆喰など自然素材にこだわったシックでモダンなデザインが特徴。地域に根ざしたお寺づくりを目指し、誰でも参加できる仏教入門レッスン「0からはじめる仏教の学校」(6月8月10月開催)や落語会など様々なイベントを定期開催予定。
文/吉野潤子