■檀家制度やしがらみを敬遠する若い世代。一方で、故人を偲ぶ気持ちは変わらない
若い世代の“墓ばなれ”の背景には、人口減少だけでなく檀家制度に対する不信感の高まりもあると見なされている。
檀家とは、“信者が特定の寺に所属して、お布施を納めて寺の財政を支援する”制度だ。日本社会に古くから根付く制度だが、最近は檀家のしがらみを敬遠する人が増加している。それに伴い葬儀の簡素化も全体的に進んでいるが、一方で世の中が変化しても故人を偲ぶ気持ちは変わらないと、住職は教えてくれる。
「現代は超長寿時代といわれていますから、将来の生活への不安もあるのかもしれません。生活費を蓄えておかなければいけないので、お葬式だけにお金をかけるわけにはいかないと。また、高齢化が進んで、同年代の友人・知人のお葬式に参加したいけれど、自身も高齢で参加が難しいという例もあります。そのような理由もあって、葬儀は全体的に縮小傾向にあり、少人数化しています。東京では、20名前後の家族葬が一般的になってきました。
見栄を張るような豪華な葬儀ではなく、家族だけで故人を偲ぶと。昔は白木祭壇が多かったですが、ここ10年ほどはほぼ生花祭壇です。
華美すぎるものは必要ないので、何とか節約して安く済ませようという人は実はそこまで多くありません。また、檀家の世襲制には拒否感があり、自分の子どもたち世代にまで強制したくはないけれど、自分の代だけならということで積極的に参加される方も意外と多いです」
葬儀というと亡くなった本人の意向に目を向けがちだが、残された人々にとっても重要な役割を果たすものだ。
「最近は散骨もブームですが、それだと残された家族はお参りに行く場所がなく、喪失感がある。葬儀には、遺族のそういった喪失感や悲しみを柔らかく癒していく作用もあるのです。直葬も増えていますが、そういう方にもご縁をいただいて法名をお授けすると、やはり皆さん安心されますね。ほとんどの方は、ものすごく先進的なことがしたいわけではなく、ちょうどいい選択をしたいと思われているのではないでしょうか」