「力士の食事」と聞けば、「ちゃんこ鍋ばかり食べている」と想像する方も多いかもしれない。ところが、意外にも彼らの日々の食事はバラエティーに富んでおり、グルメな力士も多い。そして、あまり知られてはいないものの、有名力士の食にまつわる興味深いエピソードも数知れず。
そうしたエピソードを豊富なイラスト・写真付きで紹介したのが、『相撲めし-おすもうさんは食道楽-』(琴剣淳弥/扶桑社)という1冊の書籍だ。著者は、元力士で日本相撲協会の公認漫画家の琴剣淳弥さん。土俵外での力士とのつきあいが多い琴剣さんによれば、力士は「誰よりもグルメ」で「最先端の食事情に詳しく」て、「料理の腕前もピカイチ」だという。
では、具体的にどのようなエピソードがあるのだろうか?本書からピックアップしてみた。
■かつては食にあまり興味がなかった、第71代横綱 鶴竜関
ちょっと信じにくいが、鶴竜関の入門時の体重は65kg。食べることへの興味が薄く、体重を増やすことに苦労したという。そして、多くのモンゴル出身力士と同じく、生魚が苦手。これを克服するため、井筒親方は鶴竜関をおいしいと評判の寿司屋に連れてゆく。
琴剣さんは、「生魚は体を大きくするために必要はないかと思いきや、栄養面ではバッチリの食材」と記しており、寿司を含む日本食は、外国人力士が体を大きくさせるために通過すべき関門だという。158kgという横綱にふさわしい巨躯を得られたのも、おいしい寿司屋のおかげと言えそうだ。
■髙安関が、本場所初日にアサリ汁とトンカツを食べるわけ
横綱に最も近い大関と注目株の髙安関。なんでも食べる大食漢だが、本場所初日の昼食は、必ずアサリ汁とトンカツの組み合わせ。そのわけは―
このように、力士はゲン担ぎなところがある。琴剣さんは、「相撲部屋では鶏肉がよく出ますが、それは二本足で立つ鶏は手を土につけないので縁起がいいとされているからです」と書いているように、誰もが1つや2つはそうしたメニューがあるよううだ。