■連載/阿部純子のトレンド探検隊
◆肌の健康を保つ3つの生体バリア
しみやくすみ、小じわに毛穴、たるみといった肌の悩みは年齢を重ねるほど増えてくるが、肌の健康維持のためにはエイジング化粧品だけでなく多角的なアプローチが求められる。
「老化を進める危険因子は免疫低下、糖化ストレス、酸化ストレス、心身ストレスなど多くの要因があり相互作用で進んでいく。食事や、加齢などに伴う炎症に一番関係してくるのが免疫。免疫は病原体から身を守り、24時間体の中をパトロールする機能。年を取ると体の中の異常細胞は増えてくるが、免疫が低下するとそれをうまく退治することができずに、慢性炎症、がん化リスクが高まる。
肌の美しさは、しみ、くすみ、黄ばみといった色、小じわ、にきび、毛穴といった質感、たるみ、脂肪などの形の3要素が関わってくる。加齢によりメラニンの合成が進むと肌がくすんでくるし、毛穴が常に炎症を起こっている状態になったり、コラーゲンなどが減ることによって皮膚が薄くなり、笑ったときのしわがだんだん消えなくなるということが起きてくる」(昭和大学藤が丘病院形成外科 天現寺ソラリアクリニック 松宮敏恵 医師)
皮膚の健康を守るバリア機能のひとつに、細胞同士を橋渡ししてくれる「タイトジャンクション」という構造がある。表皮にあるタイトジャンクションはウイルスなどの悪玉菌の侵入を防御する、いわば門番のような存在。タイトジャンクションが破壊されてしまうと悪玉菌が侵入するので、T細胞、マスト細胞、マクロファージといった免疫が出動する。タイトジャンクションと生体防御の抗菌ペプチドは密接なつながりがあり、タイトジャンクションが壊れると抗菌ペプチドが産生され、異物を排除する働きをする。
タイトジャンクションには水分を保つ役割もあり、年を取ると肌がカサついてくるのは、タイトジャンクションの機能が落ちてしまっていることが原因。タイトジャンクション機能が低下すると、スキンケアのクリームを塗っても水分を保つことが難しくなる。
腸内フローラと同様に、肌にも生息する微生物群がありこれらは「肌フローラ」と呼ばれている。肌フローラのバランスが良好で安定した状態であれば、肌の健康も保たれやすい。
肌フローラは15万種が知られているが、1万種以下になると肌のバリア機能が働かなくなり、さまざまな皮膚病変を引き起こす。肌フローラと、皮膚や粘膜で産生される悪玉菌を排除する生体防御物質の抗菌ペプチド、タイトジャンクションの3つが、肌の生体バリアを構成する機能となる。