いつの頃からか、道の駅が産直販売の象徴になってきた。そこに行けば地元の新鮮な食材が安く買えると、全国に名をとどろかす駅も多数ある。
「とてもいいものが買えた」、「こんなものが売っているなんて知らなかった」など喜びの声もよく聞く。
一方、「他地域の商品も多かった」「加工品の原料が外国製だった」など残念な話も。地元の人たちの買い物の場になっているのなら、それもありなのだろうが、産直の定義に疑問を感じることも多々あった。
そんな中、筆者が今までで最も惹かれたのは、福岡県宗像市にある「道の駅むなかた」の物産直売所だった。
■地物への徹底したこだわり
道の駅むなかたは2008年にオープン。宗像市の中心街から離れた国道495号線沿いにある。敷地の脇は釣川の河口、玄界灘は目の前。それ以外はのどかな風景が広がっている。
地理的には福岡県の二大都市、小倉と博多の中間にあたるが、両者は九州自動車道や国道3号線で結ばれているため、道の駅周辺の交通量は決して多くない。
それでも、朝9時のオープン前(6~9月は8時30分)には駐車場はどんどん埋まり、物産直売所の入口前に人が集まる。入口が開かれると、真っ先に人だかりができるのが水産物コーナーの鮮魚売り場だ。なぜこんなに人気が高いのか?
その秘密は徹底した地場へのこだわりだ。ここに出品することのできるのは、宗像市か福津市に住所や事業所を持つ人という条件があり、地物にこだわった商品を出すよう求めているからだ。
■初年度から目標を軽く突破
たとえば鮮魚。地元の鐘崎・神湊・大島・地島などの漁港からどんどん新しいものが運ばれてくる。売り方は大型のブリやタイなどはサクにしたものもあるが、大半が丸ものそのまま。それ以上の加工は有料となる。
もちろん、並ぶのは旬のものに限られ、海が荒れると数は極端に減る。かといって、そこにサーモンや冷凍マグロを並べられていても興ざめしてしまうわけで、正直な商売をしている証と納得できる。
このような姿勢が受け入れられ、初年度の目標売上げは7億5000万円に対し、12億8000万円と大幅に上回った。以降も順調に伸び、年商1000万円以上の出品者は数十人。オープンから5年も経つと、搬入する車がどんどん新車になったとの逸話も残っているほど。