お手持ちのレンズを見てください。MF専用レンズであれば、おそらくほとんどのレンズで『ft(フィート)』『m(メートル)』による距離指標が記載されているかと思います。
この写真のレンズの場合は赤文字がft、白文字がmの表記です。これはピントの合う距離の目安であり、『0.5』に目盛りを合わせたら、カメラ(正確にはカメラ内のセンサー面)から0.5mの位置でピントが合いますよ、ということになります。
『10』なら10m先にピント面がきます。『∞』は無限遠と言い、遠くの景色までピントを合わせたいときに使います。
地面や壁など、奥行のある連続した被写体を撮ると、ピントの面が見やすいかも知れません。
いかがでしょうか? AFに頼っているとピント・フォーカスは、一般人にはわからない何やらハイテクな仕組みのように感じられますが、距離だとわかれば意外と単純なものです。このピント面の感覚がつかめたら、AFもより効率よく理解して駆使することができるでしょう。AFであっても、距離とピント面という考え方は同じです。それを人間の手と目で合わせるのがMF、機械で測って合わせるのがAFというだけです。
■MFの撮影は楽しい!
写真は、上達を実感するのが難しい趣味です。趣味を楽しんで続けていくには技術の向上による喜びが必要不可欠ですが、良い写真というもの自体が明確なモノサシを持たないため、全体的な技術の向上というものはあるものの、それを体感するにはなかなか時間がかかります。
ですが、MFによる撮影は技術の向上を如実に感じることができます。最初はファインダーを覗いても、ピントが合っているのか、いないのか、はたまたどこに合っているのか迷うことと思いますが、修練を積むとピント位置がどんどん見えてくるようになります。カメラによって見やすい、見づらいなどありますが、慣れることでより見やすくなるのは確かです。これを『ピントの山を掴む』などと言います。
そして、ピントがバシッと決まったときの快感はクセになります。射撃などのシューティング競技に近いものがあるかも知れません。英語で写真を撮ることを『shooting』と言いますが、それが意味するところを体感できるでしょう。ピントを見極めることができるようになれば、この写真で何を見せたいのか、そのためにどこにピントを持ってくれば良いのか、などと写真自体を、もっと詰めて撮影することができるようにもなります。
MFもまた、奥の深い世界です。達人はAFよりも早く正確にピントを合わせるといいます。この技術を磨くというだけでも、写真をじっくり長く楽しむことができるでしょう。ハードルは高く感じるかも知れませんが、ぜひチャレンジしてみてください。また違った楽しさを見つけることができるでしょう。
それでは、ステキなカメラライフを!
取材・文/太田史郎(おおた・ふみお)
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