「野菜の長期保存」は、それひとつをテーマにするだけでも1冊くらい本が書ける。
考えてみていただきたい。人間、野菜がないと生きていけないのだ。これは決して大げさな表現ではない。塩漬けの肉とビスケットのみで数か月、密閉された空間で生活をしたらどうなるか。ビタミンC不足が原因の壊血病で死ぬ可能性が高い。インド航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマの船団は、実際に「塩漬け肉とビスケット」の食事だった。そのため、船団員の3分の2が航海途中で落命した。
現代は壊血病の心配は少ないとはいえ、ビタミンCが人体機能の作用に大きく影響するという事実は変わりない。健康のために、常にいくらかの量の野菜は常備しておきたいものだ。
■「野菜保存」と人類
かつての日本人は、食料を土蔵造りの建物に保管した。
もし「世界野菜保存史」という新たなジャンルの学問ができたら、日本の土蔵造りは間違いなく1ページを飾るだろう。内部をほどよい湿度に保ち、防火・蓄熱作用もある。これは左官職人が土を練って塗り上げた壁がもたらすものだ。
とくに戦国時代は、食料の有無が一国の行く末につながった。食料の長期保存ができなければ、戦などできようはずもない。だから戦国大名たちは、土蔵造りの建物の建設に欠かせない左官を高禄で囲い込んだ。
だが、現代では冷蔵庫というものが登場し、土蔵というもの自体を見かける機会がなくなった。
土蔵は見直されるべきではないのか?
そう考えた人たちが、クラウドファンディング『Makuake』にこんなものを出展した。DIYキット『野菜蔵』である。