徳島県における健康問題といえば、糖尿病を思い浮かべる人が多い。1993年から2006年にかけ、14年連続糖尿病死亡率全国ワースト1という不名誉な記録を持っていたからだ。
その後関係者や県民の努力により、2014年ワースト7位、2015年ワースト5位、2016年ワースト8位と改善が見られるが、そもそもなぜ糖尿病死亡率が高いのか。食文化的なアプローチで見ていくと……。
■甘いものはご馳走
県の関係者に話を聞くと、まず出てくる話は「甘いもの好き」の問題だ。
とくに高齢者は「甘いものはご馳走」との刷り込みがあり、お菓子類を自宅に常にストック。孫が遊びに来ようものなら、甘いジュースやお菓子をどんどん与えてしまう。この傾向は冬の寒さが厳しい山間部によく見られる。孫可愛さのあまり、車で学校への送り迎えまでしてしまう高齢者も多いとの報告もあった。
家にお客さんが来れば、大皿に食べきれないほどの菓子でもてなす。それに手を付けずにいると「まずは食べて」と促されるのもお約束。
四国には八十八カ所巡りのお遍路さんをあちこちで見かけ、町の人々は食べ物や飲み物をふるまう「お接待」の文化が昔からあったことも原因のひとつとも言われている。
■お寿司大好き。これがまた甘い
お隣高知県と同様、徳島県も家庭で寿司をよく作る。ご存じのようにシャリは炭水化物=糖質だ。しかも元からの甘いもの好きなので、酢に対する砂糖の量がかなり多い。ある事業所が家庭で作る酢飯の配合を調査をしたところ、砂糖の使用料が通常の1.5~8倍もの数値になっていたほど。
つまり、本人たちは普通に作っているつもりでも、知らず知らずのうちに甘さが郷土の味になり、甘味に対するこだわりが強いのだ。それを物語るように、徳島市のスーパーマーケットで砂糖売り場を覗いてみると、一般的な上白糖に三温糖、グラニュー糖、中双糖(ざらめ)、氷砂糖、黒糖、きび砂糖、和三盆…がズラリ。圧巻だ。
■寿司酢も焼肉のタレも甘口が人気
前述のスーパーマーケットではお酢売り場も特長があり、一般的な酢のほか、すし酢の種類がかなり多かった。人気の商品がどれか聞くと、誰もが知る大手のものだと教えられた。が、筆者が普段目にするものとちょっと違う。
お分かりだろうか。そう「あまくち」と記されている。こんな商品、東京近郊で見たことがない。早速メーカーに問い合わせると「その商品は甘いものを好む、中四国の一部の県限定に出荷している商品です」との回答があった。
同じく焼肉のタレ売り場も興味深く、東京などでは中辛に人気が集まるはずが、ここでは売り場面積が一番広かったのが甘口。追求すればするほど奥深い徳島の甘いモノ文化だった。