ティーンの間で今、まるでLINEの会話を見ているかのように小説が読める、チャット型小説アプリがブームになっているという。米国では「チャットフィクション」と呼ばれ数年前から爆発的人気を誇るというが、果たしてこのチャット型小説とはどんなものなのか。その人気の背景や、恋愛・ホラーが合う理由などを探る。
■米国では「チャットフィクション」が人気
LINEの履歴を見直して、笑ったり、感動したり一喜一憂した経験は誰もが一度はあるだろう。なぜかあの小さな画面で繰り広げられるチャットにはドラマがある。
そうしたチャット画面がそのまま小説になった「チャットフィクション」は、すでに米国では爆発的に人気だという。これを受け、日本でも「DMM TELLER」「balloon」などのチャット型小説アプリがじわじわ人気を呼んでいる。
「DMM TELLER」プロダクトマネージャーの大久保光佑氏は、米国でのチャットフィクションや日本との違いについて次のように話す。
「米国でチャットフィクションが初めて大衆に認知され出したのは、2015年の終わりから2016年の前半にかけてだったと思います。先駆者の『Hooked』というアプリが一気にストアランキングの1位を獲得し、その後『Yarn』や『Tap』などの後発組が登場しました。Hookedはホラーやサイコミステリーを中心に展開しており、YarnはSNSや芸能人など、よりティーン層になじみのあるプロット(ストーリー設計)やコンテンツが特徴です。
日本では『DMM TELLER』が先駆的にリリースされ、後発的に4~6アプリが登場しました。基本的に、日本とアメリカのアプリのUI(ユーザーインターフェース/使いやすさ)やUX(ユーザーエクスペリエンス/ユーザー体験)に大きな違いはないですが、日本のホラー作品は『ジャパニーズ・ホラー』と言われるのと同じように、ストーリー上の違いはあるように思います」
■チャット型小説アプリの本や電子書籍との違い
試しにDMM TELLERで恋愛チャット小説を読んでみた。タップするごとにチャットの吹き出しが現れる軽快さを感じつつ、あっという間に読んでしまった。LINEと見た目が似ているので、親しみも感じる。スマホやPCで小説を読むのは、電子書籍の存在から決して新しいものではない。大久保氏は、チャット型小説アプリの本や電子書籍との違いについて、次のように話す。
「DMM TELLERのコンテンツと、紙の本や電子書籍はニーズや体験が違います。紙の本や電子書籍は、地の文を含めた詳細な心理描写やシーンの描写が特徴的で、よりストーリーのディテールを楽しみたいユーザーにとって最適なコンテンツを提供していると考えます。一方DMM TELLERのコンテンツの特徴は、ライトで手軽に楽しめるコンテンツが中心で、チャットで進行することによる臨場感と没入感を演出できていると考えます。
また『短文でコンテンツを提供している』点が本や電子書籍との大きな違いです。ユーザーにインタビューをしてみたところ、今の子は、SNSやチャットアプリが浸透し、短文に慣れてしまっているため、読書量が先に可視化されていると読むことに心理的抵抗があるそうです。慣れている形式でコンテンツ提供できている点も、若年層に人気の理由の一つだと思います」
大久保氏によると、「多彩な描写で読者を楽しませる本・電子書籍」と「短文コンテンツで手軽に臨場感を味わえるDMM TELLER」は、お互いの住み分けがはっきりしているため、今後、出版社との連携や互いにコンテンツを提供し合う可能性にも着目しているという。すでに取り組みが始まっている出版社もあるそうだ。