■子育て絵本アドバイザーに聞く!人気の絵本が人気の理由
そこで、ランキング上位の定番絵本の中から、「はらぺこあおむし」をはじめとした4つの絵本について、なぜ人気なのかを探ってみたい。子育て絵本アドバイザーの冨永有季さんに長く愛される、人気の理由を話してもらった。
●「ぐりとぐらシリーズ」(福音館書店)
「子どもは、絵本の世界に入っていくことができます。自分で読むのではなく大好きなママやパパに読んでもらうことで、絵本の世界を堪能しているのです。
ぐりとぐらのシリーズは、のねずみのぐりとぐらの視点でのお話です。子どもたちにとっては、自分がぐりとぐらになった気持ちになり、絵本のお話を冒険しているのです。自分が小さくなってストーリーの中に入り込むってワクワクしませんか? 子どもには本当にそれができるといわれています。のねずみという可愛らしい小さな動物、お料理や海水浴など身近な題材なのも、子どもたちの想像力をかきたてることから、受け入れられやすいのかもしれません」
●「はらぺこあおむし」(偕成社)
「元祖しかけ絵本といえます。シンプルにストーリーに添った形のしかけは、子どもの冒険心をくすぐります。ページに穴があいていたり曜日ごとに区切られていたり、自分でページをめくる楽しさもこの絵本にはあるのでしょう。ダイナミックな画風(貼り絵)、はっきりとしたカラフルな色彩など、子どもだけでなく大人も魅了する芸術作品だと言えるのではないでしょうか。
小さなあおむしがたくさん食べて大きくなっていき、やがてさなぎになり、美しいチョウになるなど、ひとつのストーリーの中でさまざまなことを無意識下に教えてくれている素晴らしい作品だと思います。たくさんの食べ物が出てくるのも魅力の一つですね。
子どもの心をつかんで離さないさまざまな工夫が、この一冊に集約されていると言っても過言ではありません」
●「だるまさんシリーズ『が・の・と』」(ブロンズ新社)
「手足の短いだるまさんのしぐさや豊かな表情、そして“びろーん”や“どてっ”などのオノマトペ(擬音語)も味のあるだるまさんの魅力です。
リズム感のある短い言葉や文章は、良い絵本を選ぶポイントのひとつです。だるまさんの動きやしぐさ、短いフレーズが、子どもや赤ちゃんだけでなく大人にも笑顔を誘ってくれているのでしょう。大人が楽しみ、笑いながら読む絵本は、子どもにとって何よりの心の栄養になります。豊かな感性も赤ちゃんの頃からしっかりと育まれる絵本だと思います。
赤ちゃんの目はまだはっきりと見えていません。そんな中、白・黒・赤といったはっきりとした色合いは、赤ちゃんの目にも認識しやすい色です。そういった工夫もこの絵本から感じられます」
●「100万回生きたねこ」(講談社)
「死や愛をテーマにした、どちらかと言えば大人たちに向けたメッセージ性の高い絵本ですが、子どもにも読み継がれる長く愛される絵本です。
絵本は読むことで人間力が育ち、磨かれていきます。このような深い内容の絵本を親が声に出して読んであげることで、子どもの無意識下に、愛情・表現力・生きていくために大切なことなどがインプットされていきます。まだ意味が理解できない年齢でも、その子の豊かな感性や安定した情緒を育んでいきます。
『愛されることよりも愛すること』『死よりも生きること』それぞれの大切さを気付かせてくれる絵本だと思います。10歳を超えたら自分で読むのもいいですね。読んでもらうことと自分で読むことでは、気付きや発見・発想、想像・創造が違ってくるためです」
4作品それぞれ、長く読み継がれる理由があるようだ。まだ読み聞かせたことのない絵本があれば、ぜひ手に取ってみよう。
取材協力
冨永有季さん
子育て絵本アドバイザー/EQ絵本認定講師
絵本をたくさん子供に読み聞かせすることで子供の感性や心・知能の発達だけでなく、親として心穏やかな子育てができることを自身の経験から実感。絵本のある子育てを推進中。
https://www.ehonlife-y.com/
取材・文/石原亜香利