1日に1回、太陽の光のもとで散歩するだけで、風邪のようなありふれた疾患から、がん・心臓病のような重い病までをも予防・抑制し、筋力増加の効果もあると唱える医師がいる。日本機能性医学研究所の所長を務める斎藤糧三医師がその人で、最近刊行された著書のタイトルは、まさに『病気を遠ざける! 1日1回日光浴』(講談社)。その秘密は、ビタミンDにあるという。
ビタミンDは、長い間「体内のカルシウムの吸収率を高め、骨代謝を健全化させる」という、他のビタミンに比べれば地味な脇役程度に見られていた。
それが、最近になって米国では「人体のあらゆる機能を調節する」重要なものへと扱いが変わり、今や最も注目されるビタミンとなっている。例えば、ビタミンDサプリの市場規模は、2006年~2011年の6年間で50倍に大成長している。もっとも、これはあくまで米国での話。日本では、ビタミンDに対する認識は、昔からあまり変わっていない。
実際のところ、ビタミンDの力とはどのようなものだろうか?『1日1回日光浴』では、以下のような効力があるという。
■がん発症リスクの抑制
正常な細胞と同じく、がん細胞にもビタミンDと結合する受容体がある。ビタミンDがその受容体と結合すると、がん細胞のオートファジー(細胞内のたんぱく質を分解して栄養分とする作用)を抑制し、がん細胞の増殖を防ぐ働きがある。
これは、前立腺がん患者に1日4000IUのビタミンDを1年間摂取してもらう実験で、半数以上の患者でがん細胞の減少が見られるなど、多くのエビデンスがある。
■糖尿病の予防
インスリンの分泌量が減るなどして起こる糖尿病。ビタミンDには、インスリンを分泌する膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促してくれる。また、ビタミンDを投与して血中ビタミンD濃度を上げることで、糖尿病性腎症や糖尿病性神経障害などの合併症を抑えるという。
■風邪・インフルエンザの予防
皮膚や免疫細胞の受容体にビタミンDが結合すると、抗微生物ペプチドが合成されるが、これは有害菌の細胞膜を破壊して無力化させたり、免疫細胞マクロファージの攻撃力を増強させる働きを担っている。特に、呼吸器系感染症については、ビタミンDの摂取で罹患リスクが半減したという研究結果もある。
斎藤医師は、インフルエンザの予防については「予防接種よりもビタミンDの摂取のほうが有効」だと太鼓判を押している。