■新幹線が醤油に与えた影響とは
ところで、山形の醤油について皆さんはどのような味を想像するだろう。きっと多くの人が「東北だから塩分強め」のイメージを持っているのではないだろうか。
これに対し佐藤さんは「九州ほどじゃありませんが、実は甘いのです」と否定しつつ、「けれど、新幹線の影響で各県の味の好みは変わりつつあります」とも。とくに福島、仙台は首都圏との往来が増え、大手醤油メーカーの味が入りやすくなった。つまり、東京寄りの味に変化しつつあると指摘する。
一方、山形や秋田はそれぞれに新幹線で首都圏と結ばれているものの、ご存じのように福島や仙台から在来線に乗り入れる=速度が落ちるため、東北新幹線沿線ほど首都圏との往来がない。
山形空港も東京と結ぶ便は日に2往復のみ。高齢化率も高いため、なかなか東京の味は受け入れられず、大手メーカーも積極的に参入してこない。結果、昔ながらの味が守られたと語る。
ちなみに、日本の醤油産業は、大手5社で全体のシェアの1/2を占めている。そして、残りの1/4を準大手30社、最後に残った1/4を中小1200社で争い、丸十大屋も最後のカテゴリーのひとつといい、山形県内での販売がメーン。まさに県民に支えられている味なのだ。
■強めのだしが決め手
味マルジュウが山形で絶大な人気を誇る理由はほかにもある。名物、芋煮の存在だ。県民にとって絶対的な郷土&家庭&宴会料理であり、その味付けに利用する人が多いのだ。
もちろん慣れた人なら醤油と砂糖などで味付けするが、近年は料理に手間をかけない家庭が増え、味マルジュウで手早く味を決めるケースも多い。丸十大屋もそういう動きに敏感に対応し、もっと手軽な「やまがた芋煮のたれ」を季節商品として販売したところ、すぐに売り切れている。