2017年の東京モーターショーで華々しいデビューを飾ったのが、カワサキのヘリテイジスポーツモデル「Z900RS」。すでに国内でもデリバリーが開始され、高い人気を誇っている。注目の高さは国内だけにとどまらず、イタリアで開催されたEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)でも高い評価を得ていたという。そして、EICMADでZ900RSと並び、注目を集めていたのが、その派生モデル「Z900RS CAFE」である。Z900RSをベースにしたメーカーメイドのカフェレーサー・カスタムなのだが……。
さて、バイクの話題になったときによく聞く、この「カフェレーサー」という言葉。なんとなくスポーティーなカスタムということはわかるのだけど、どうして「カフェ」なのか? その語源を知らない人は意外と多いのではないだろうか?
ここでは知っているようで意外と知らない「カフェレーサー」についておさらいしよう!
■夜な夜な公道レースに興じた不良たちが好んだカスタム
カフェレーサーの起源は1950~60年代にさかのぼる。当時、24時間営業をおこなっていたイギリス・ロンドンにあるカフェ「エース・カフェ」にライダーたちが夜な夜な集まり、自慢の愛車を駆って公道レースに興じていた。もちろん、彼らは愛車を吊るしで乗るようなことはせず、思い思いのカスタムを施していた。ベース車両となったのはトライアンフやBSA、ノートンといった、当時世界最高の性能を持つバイクで、低く狭くセットしたセパレートハンドルにバックステップ、そしてロングタンクとシングルシートという組み合わせで、まさにレーサー然としたスタイルを持っていた。つまり、“カフェ”に集まる“レーサー”ということでカフェレーサー……不良たちの乗る改造バイクが、その起源なのだ。
ちなみに彼ら不良たちは「ロッカーズ」と呼ばれ、そのファッションもまた、今も一部の熱狂的なファンによって受け継がれている。さらに余談ながら、ベスパやランブレッタといったスクーターに乗る「モッズ」とロッカーズとの抗争を描いた映画が『さらば青春の光』(1979年)である。
それから時は経ち、今やカフェレーサーは人気のカスタムジャンルとして確立。さらにカスタムどころかZ900RS CAFEのように、メーカーからもカフェレーサーをテーマとしたモデルが発表・発売されるほどになった。
カルチャーは常にストリートから生まれるというが、バイクのカスタムも同じこと。イギリスの不良たちから生まれたカフェレーサーというスタイルは、今や日本をはじめ、世界中のライダーから支持されるカルチャーへと昇華したのだ。