その4:除菌すると食道がんのリスクが増大する?
ピロリ菌を除菌すると、食道がんや逆流性食道炎にかかるリスクを心配する人もいる。ピロリ菌の除菌によって胃が正常となり、胃酸の分泌が過多になって、逆流性食道炎になる例は確かにある。しかし、これは一時的なものであり、ごく軽微なものにとどまる。また、食道がんのリスク増大については、実際にはそのようなデータはなく、根拠がないとされている。
その5:ピロリ菌の検査は簡単で迅速
ピロリ菌の有無を調べる検査費用は安く、病院や検査法によっては1,000円程度で済むところもある。内視鏡を用いない簡便な検査法が確立しており、代表的なものに尿素呼気試験法と尿検査がある。前者は、診断薬を服用したのち呼気を集めて判定し、後者は、尿中のピロリ菌の抗体の有無を調べて判定する。どちらも30分程度で、陽性か陰性かの判定結果が出る。
その6:除菌しても胃がんリスクがゼロになるわけでない
ピロリ菌保菌者は、そうでない人よりも胃がんを発症する率が10倍高い。しかし、ピロリ菌を除菌したからといって、胃がんにかかる可能性はゼロになるわけではない。胃がんを引き起こすのは、なにもピロリ菌に限らず、遺伝、喫煙習慣、塩分の高い食習慣など、様々な要因が関与するためである。
参考資料:
『胃がんでいのちを落とさないために』(浅香正博/中央公論新社)
『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(奥田昌子/講談社)
武田薬品工業『ピロリ菌のお話.jp』ウェブサイト
アステラス製薬『なるほど病気ガイド』ウェブサイト
予防医療普及協会ウェブサイト
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社の役員をスピンオフして、フリーライター兼ボードゲーム制作者に。英語圏のトレンドやプロダクトを紹介するのが得意。
※記事内のデータ等については取材時のものです。