その5:料理では軟水・硬水を使い分ける
水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量が、1リットルあたり100mg/L以下の水を「軟水」、101~300mg/Lで「中硬水」、301mg/L以上で「硬水」と呼ぶ。日本の水道水とミネラルウォーターは軟水が圧倒的に多く、逆に欧米のミネラルウォーターは硬水が多い。そのため、日本の伝統料理には軟水が合う。軟水を使えば、白米はふっくら炊き上がるが、硬水だとパサパサした感じになってしまう。鰹節や昆布から出汁をとるときも、軟水の方が旨味成分を出しやすい。ただ、鰹節から出汁をしっかり取るには、硬度が高めの水がよく、そうした井戸水の多い関東以東では、昆布より鰹節を使うことが昔から多い。水の質が、古来からの料理法にも影響を及ぼしているのである。
その6:水素水には本当に健康効果がある?
2016年12月に国民生活センターから、水素水に関する否定的とも受け取れるレポートが発表され、一部事業者と「バトル」の様相を呈している。果たして水素水には、健康改善の点で何か効能があるのだろうか?
現実問題として、数ある水素水商品のうち、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品として許可されたものは一つもない。そのため、「悪玉活性酸素を無害化する」などといった効能を表示すると、法に抵触するおそれがある。有名メーカーから出ている水素水の特設サイトを見ると、どこそこのおいしい伏流水を使っているとか、水素が抜けにくいアルミボトルに入れているといった説明は詳しいが、肝心の「飲んだらどんな効果があるか」については言及されていない。「かえって、あやしいイメージを持たれるのでは?」と余計な心配をしてしまうが、水素水の科学的研究については、「マウスの脳の活性酸素が減った」といった動物実験が主で、トクホの認定に必要な説得力のある実証は、まだ先の話。害はないので飲用自体は問題ないが、値段にふさわしい効果があるのか見極めてからでも遅くはないと感じる。
ナチュラルミネラルウォーターに、レモンなどの柑橘類、ナシ、桃といった果物の味付けがなされたものをフレーバーウォーターという。なんとなくヘルシーなイメージがあるが、果汁よりも、砂糖や果糖ブドウ糖液糖の方が多く含まれている商品が多く、そういったものは薄味の清涼飲料水と考えたほうがよい(実際、食品分類上は「清涼飲料水」となっている)。糖質制限をしている人は、ミネラルウォーターの一種だと思って、がぶ飲みしないよう注意。
参考資料:
東京都水道局ウェブサイト
大阪市水道局ウェブサイト
『からだを救う水の飲み方、選び方』(馬渕知子/講談社)
『カラダを壊す水 活かす水』(藤田紘一郎/英和出版社)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社の役員をスピンオフして、フリーライター兼ボードゲーム制作者に。英語圏のトレンドやプロダクトを紹介するのが得意。
※記事内のデータ等については取材時のものです。