■連載/元DIME編集長の「旅は道連れ」日記
60歳を過ぎた男の顔の自慢話なぞ、物笑いの種とは重々承知ながら、60歳を過ぎているからこそできる顔自慢をさせていただく。50代、いや40代でも目立つ人には目立つ、目袋と呼ばれる目の下のたるみが、61歳の僕にはほとんどないのだ。さらに目の横によるしわも目立たない。下の画像3点は、自然光にてiPhoneⅩで撮影したものだ。デジタル処理でなんでもできる昨今、「これが証拠」と言っても信憑性に欠けるかもしれない。しかしここは、信じていただけたことにして話を進める。
6年ほど前、僕は定年退職したら、コスメライターになろうと考えていた。メンズコスメを使うのが好き(多くの男性にとって面倒くさい!?)、かつ40代までの男性メンズコスメライターはいてもより上の世代にはいないのでは、というのがその理由だ。
一般に肌の手入れは、洗顔剤で汚れを落とし→ローションで肌を引き締め→美容液で潤いを与えるという流れになり、その後に僕は今回のテーマであるアイクリームを塗る。コスメライターを目指した僕は、4つのアイテムごとに様々なブランドの製品を使用してきた。日本でおなじみのアラミス、クリニーク、クラランス、メイド・イン・ジャパンの資生堂メンやSKⅡ、さらにロクシタン、ランコム、ジュリーク、キール、イソップ、モルトンブラウンなどなど。
1本のコスメを使い切るのに2~3ヶ月はかかるので、短期間に同じ効用をもつ複数の製品を試すのは無理がある。毎日違う製品を使うことは可能だが、それでは香りや使い心地はレポートできても、肝心の効果が検証不可能だからだ。ひと口飲めば違いがわかる、ワインや日本酒のようにはいかない。そこで僕は1本使い切る度に、感想を書きとめることにした。ところが、いずれのアイテムであっても、短い淡白な文章しか書けないのだ。
例えば使い心地を、ローションなら「さっぱり」とか「しっとり」、美容液なら「テキスチャーが柔らかい」とか「重い」と書いてみたが、それ以上のボキャブラリーが思い浮かばない。そういえば90年代、西麻布の伝説の女性ソムリエにあるワインの味を「お母さんの母乳にふわーっと優しく包まれる感じ」(正確ではないが、この手の表現)と説明されたが、このような感性から生じる表現力が僕にはない。またコスメの成分については、医学的・生物学的知識皆無の素人ゆえ、ブランド公式サイトの説明をよりわかりやすく読者に伝える能力がない。
ただし使い勝手なら、多少は書ける。「ビニール系の容器ながら材質が固く、本製品のような重いテキスチャーのクリームでは、最後まで絞り出せずもったいない」「スプレーがすぐに壊れてしまい、しかもキャップをボトルからはずせず、結局ほとんど溶液が入ったまま捨てるしかなかった」「毎回用心しないと、この容器では必要以上の量が出てきて使いづらい」など。しかし、こんなコスメ記事を求める読者はいないだろう。