とんかつ店のベスト・オブ・ベストは?
書籍『東京とんかつ会議』では、殿堂入りとして12店を挙げているが、さらに絞って3店をピックアップするなら、『ぽん多本家』、『特選とんかつ すぎ田』、『西口とんかつ たつみ亭』になる。
『ぽん多本家』
最上質のロース肉の脂を取り除く手間をかけ、パサつかず、しっとりとして香りがある、極上のとんかつを提供している。ご飯、キャベツ、味噌汁なども一切の妥協を排し、目配りが行き届いている。全てにおいて質が高いだけに、値段は2700円とそれなりの額になるが、それに見合ったグルメ体験を堪能できること請け合い。
『ぽん多本家』のとんかつ(写真提供:ぴあ、『とんかつ会議』より)
『特選とんかつ すぎ田』
とんかつの聖地のひとつ、浅草にある店でも最高峰に位置づけられるのが、このお店。細い幅で均等に切られた肉は、どれをとっても赤身と脂身の比率が一定という、とんかつの黄金比を実現しているのが肝。ラードのコクをまとった衣と肉を食べる、とんかつならではの幸福を噛みしめることができる。
『特選とんかつ すぎ田』のとんかつ(写真提供:ぴあ、『とんかつ会議』より)
『西口とんかつ たつみ亭』
店舗の風貌は、「街の普通のとんかつ屋さん」。しかし、供されるとんかつは、店の第一印象とはギャップのある素晴らしさ。レア気味に揚げたSPF豚が、旨味をしっかりと引き出し、衣は肉にぴったりと寄り添い、口当たりまろやか。店主が米どころ新潟出身というだけあって、ご飯のおいしさも特筆もの。脇役のポテトサラダやお新香も抜かりない。
『西口とんかつ たつみ亭』のとんかつ(写真提供:ぴあ、『とんかつ会議』より)
庶民のB級グルメのイメージが強いとんかつだが、こうしてみると実は結構奥が深い世界なのである。これを機会に、あなただけの名店を探してみてはいかがだろう?
協力
山本益博:料理評論家。1948年、東京都生まれ。レストランの催事、食品の商品開発も数多く手掛けるほか、飲食系の著書も多数。2001年フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエ、2014年には農事功労章オフィシエを受勲。
マッキー牧元:タベアルキスト。1955年、東京都生まれ。「味の手帖」編集顧問を務める傍ら、立ち食いそばからフレンチ、居酒屋、スイーツまで、様々なグルメを食べ歩く。近著に『東京最高のレストラン2017』(共著、ぴあ)など。
河田剛:グルメアナリスト。1964年、秋田県生まれ。味や素材はもちろん、調理の背景や流通に至るまで多岐にわたる視点で、料理への鋭い洞察を見せる。邦画を中心とした映画にも造詣が深い。
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社の役員をスピンオフして、フリーライター兼ボードゲーム制作者に。英語圏のトレンドやプロダクトを紹介するのが得意。
※記事内のデータ等については取材時のものです。