■のび太は負けん気が強い
最初は自分の力で何とかしようとする、ということは、負けん気が強いということでもある。個人的には以前から、のび太に対してそんな印象を持っていたが、著者も同じような見解を持っており、てんとう虫コミックス『ドラえもん(41)』収録の「世界の昆虫を集めよう」を引用して解説している。
このエピソードでのび太は、スネ夫からデパートで買った多くの昆虫を自慢されたため、もっと珍しいものをたくさん集めると息巻いてみたが、ドラえもんにひみつ道具を出してもらえるようお願いしても聞き入れてもらえなかった。仕方なく裏山で昆虫採集に励むが、なかなか虫を捕まえられない。その姿を見ていたドラえもんが、のび太の頑張りを認め、「昆虫マーカー」というひみつ道具を出してのび太の願いを叶えた。
ドラえもんは安易に、ひみつ道具を出さなかったが、いくらそうだとしても、のび太は簡単には諦めない。スネ夫に負けたくない一心で、何とか自力で虫を捕まえようとする。こんな行動から、著者はのび太の負けん気の強さをこう分析する。
「みなさんが考えているように、のび太はぐうたら生活の申し子のような男の子です。でも、決して三無主義(無責任、無関心、無気力)ではありません。のび太はジャイアンのいじめに対しても無気力になることなく、ドラえもんのひみつ道具の助けを借りて対抗しています。スネ夫の自慢話から端を発する仲間はずれに対しても、無関心を装わないで、反発心を発揮します。つまり、のび太なりに『負けん気』を起こして、彼らに向かっていきます。こうした積極的なエネルギーの積み重ねの中にこそ、夢が生まれたり、夢が叶う何かが潜んでいるのです」(同著・第5章115ページより)
著者をして「ぐうたら生活の申し子」と言わしめるのび太は、大人だったらまるで「ダメ人間」という言葉がピッタリ似合うほど。しかし、今回紹介した側面だけを見ても、少しは印象が変わり見直したのではないだろうか?
この他にも本書からは、のび太の意外な側面が見え、そこから成功法則を導いている。興味を持たれたら、本書と一緒に『ドラえもん』も読んで振り返ってみるのもいいだろう。そうすれば本書で書かれている、のび太メソッドがより理解できるだろうし、何よりしずかちゃんを生涯のパートナーとして射止めることができた理由も納得できるはずである
■関連情報
『ポケット版 「のび太」という生き方』
アスコム刊/横山泰行著(800円+税)
文/大澤裕司
※記事内のデータ等については取材時のものです。