■のび太は最初から他人に頼らない
また、のび太には、「意志が弱い」といったイメージを持つ人もいるだろう。ドラえもんに頼る前に全力で事に当たっているという印象に欠ける。しかし、てんとう虫コミック『ドラえもん(11)』に収録されている「ネジまいてハッスル!」では、違った側面を垣間見ることができる。のび太は、「のろまだなあ」などとバカにされることをドラえもんに相談したところ、ドラえもんが「ハッスルねじ」を出して、のび太の行動をスピーディに変えた。ドラえもんのひみつ道具に頼って安直に解決を図ったようにも見えるが、著者は、のび太がドラえもんに相談する前のプロセスに着目し、ある側面を引き出した。それは、最初から他人に頼らないというものである。
「『ドラえもん』全作品の吹き出しを分析した結果、のび太は決して最初からドラえもんに泣きつくわけではないことがわかりました。結局は本人の能力不足で克服できない場合が多いものの、のび太はいったんは彼なりに頑張って、問題に挑むのです」(同著・第6章118ページより)
確かに著者の指摘通り、振り返ってみると、『ドラえもん』ではこのエピソードに限らず、のび太は最初から諦めていないと思われるところが多々見受けられる。例えジャイアンとスネ夫にバカにされても、最初は自分の力で立ち向かう。能力が足りないだけで、問題を自分で解決する意志は十分すぎるほど持っているのだ。