『ドラえもん』といえば、誰もが知っている国民的マンガだが、ドラえもんと同時に欠かせない存在が、のび太である。あまりにも有名なので詳しい説明は省略するが、自分自身を投影し感情移入してしまった読者も少なくないだろう。
憎めない存在ではあるが、しかしのび太は、ドラえもんの助けがなければどうすることもできないことが圧倒的なダメな子。厳しい言い方をすれば、自力では何一つ成し遂げることができそうにない負け犬である。しかし、負け犬に見えるのび太が、実は人生を上手に歩んでいるとしたら、ちょっと驚くのではないだろうか? このような視点に立ち、のび太の生き方から成功の法則を導いたのが、『ポケット版 「のび太」という生き方』(アスコム刊)である。
本書は、「ドラえもん学」を提唱した富山大学名誉教授の著者が、それまでの研究成果を元にして、のび太が夢を叶えられた方法をまとめたもの。2004年に発売された『「のび太」という生き方』(同)を読みやすく再編集し、第8章で新たな話を4つ加えて改良した。
著者の分析結果によれば、のび太は人生の重要な節目において着実に夢を叶え、負け犬から勝ち組に変身しているという。のび太が夢を叶えた方法(=のび太メソッド)を使えば、どんなダメな人間でも夢が叶えられるということ。人生に役立つヒントが隠されている、と言ってもいいだろう。
■のび太は反省して対策を考える
のび太のイメージを聞かれると、「何をやってもダメな子」と答える人が多いだろう。ドラえもんに頼って助けてもらうも、それでも失敗してしまうことがザラ。ひみつ道具などをもってしても、うまくいかないシーンを思い浮かべて、こうイメージするのではないだろうか? 例えば、てんとうむしコミックの『ドラえもん(9)』に収録されている「のび太ののび太」では、物覚えの悪さを自覚したのび太が、ドラえもんが使っているタイムマシンを使って過去からやってきた自分自身に教えてもらうという方法を使うも、ママの存在などを考慮に入れていなかったので、結局失敗する。
一見すると、このエピソードには教訓などなく、いつも通りののび太が描かれているが、著者はのび太から、反省して対策を考えるところを見習いたい点として挙げ、行動力にも注目した。いかにも頼りなく見えるのび太に、行動力などあるのか? 著者の見解は次の通りだ。
「ママの存在など予期せぬ事態を考えていなかったため、結局『タイムマシン』を使ったスケジュール管理はうまくいきませんでしたが、道具の力を借りてでも、『何とかしよう』とチャレンジする姿勢は立派です。何もしないで『だって、こういう性格なんだもの』と諦めたり、『そういうの、苦手なんだ』と言い訳するよりは、一歩前進しているといえるでしょう」(同著・第2章44ページより)
頼りなく見えても、のび太は実践に移す行動力を持ち合わせていた。結果的に失敗しても、問題を解決するために即行動に移した点は頼もしい。のび太に対する見方が変わったのではないだろうか?