●「せこい」(徳島)
徳島では「せこい」と言えば、「つらい」、「苦しい」を意味する。「風邪をひいてせこい」と言っても、「風邪をひくとはけち臭い」というわけでなく、「風邪で苦しい」と訴えている。
肉体的なつらさだけでなく、精神的なつらさや経済的な苦境にも使われる、広い意味合いを持った表現である。
●「とろける」(青森)
青森では「片付ける」の意味で「とろける」を使う。「道路の雪とろけた」とは、路上の雪がとけたわけでなくて、「道路の雪かきをした」という意味になる。
おそらく平安時代に使われていた「取り除ける」が、時代とともに形を変えて「とろける」になったとみられる。
●「みずくさい」(関西、西日本の一部)
関西や西日本の一部地域の人が、「このみそ汁、みずくさい」と言っても、みそ汁がよそよそしくて他人行儀なわけではない。ここでは「味がうすい」の意味で使われている。
鎌倉時代においては「水くさき酒」という表現があるが、これは「水っぽい酒」を意味した。他の地域では、「よそよそしい」の意味へと変質したが、この地域だけは本来の意味が残っているというわけ。
●「もえる」(徳島、鳥取)
徳島、鳥取で「もえる」とくれば、「増える」を意味する。「公園に来る人がもえる」は「人が増えた」のであって、「人が萌えた」わけではない。
さらに徳島の一部では、「大きくなる」の意味で使われることも。「お芋がだいぶもえとる」と言っても、芋がほくほく焼けている様を表しているのではなく、作物の芋が成長していることを意味している。
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社の役員をスピンオフして、フリーライター兼ボードゲーム制作者に。英語圏のトレンドやプロダクトを紹介するのが得意。